ISICO トップ
目的別
組織別
地場産業振興センター
いしかわサイエンスパーク
デジネット DGnet
こんにちは  ゲスト  さま|メルマガ・会員登録ヘルプ

食物アレルギー対応のレトルトカレー 災害用備蓄食として注目集める

掲載号 vol.91
記事内容

チャンスをつかみ、未来をひらく
Seize a chance and open a bright future.

 

大規模災害時、食物アレルギー疾患を抱えた被災者が苦労するのが食事だ。避難所ではアレルギー対応食が手に入るとは限らない。原材料が分からないまま口にすれば、ショック症状を起こす危険性もある。そんな被災者でも安心して食べられるレトルトカレーを開発したのが三屋(とくや)だ。米とルーが一緒に入っている上、温めずにそのまま食べられる便利な商品で、自治体や企業などから多くの引き合いが寄せられている。

 

食物アレルギーの原因27品目を不使用
災害用備蓄食として自治体などへ販売する「ごはんが入ったそのままでおいしいカレー」 写真 三徳屋が開発した「ごはんが入ったそのままでおいしいカレー」は、小麦や卵、乳をはじめ、アレルギー反応を引き起こす原因となる27品目を使わないレトルトカレーである。その名の通り、米とルーが混ざった状態になっているほか、動物性油脂を使っていないため、冷えてもルーが固まらず、おいしく食べられる。

 水道やガス、電気の供給が寸断された状況でも手軽に食事を取れる上、食物アレルギーのある人でも安心して口にできる。災害時はゴミ処理にも苦労するが、レトルトパウチなので、食べ終わった後は小さくたたむことが可能で、ほとんど臭わない。
 今春に発売したレギュラー(中辛相当)に加え、今秋には小さな子どもやスパイシーな味が苦手な人でも食べやすいようにと甘口をラインアップ。甘口は塩分量を0.6グラムに抑え、この商品を3食分食べたとしても、厚生労働省が定める1日当たりの塩分摂取量の目標値を下回るようにした。
 発売以降、災害用備蓄食として自治体や学校、民間企業、スーパー、病院、介護施設、自衛隊などから見積もり依頼が寄せられている。イラン、台湾、ベトナムといった海外からも問い合わせがある。既にかほく市に納入したほか、内灘町や津幡町でも賞味期限が迫ってきた備蓄食を入れ替える際に導入する予定だ。

 

災害時に役に立つ食品を
 開発のきっかけとなったのは、大聖寺谷勇社長が会社を設立する3日前に起きた東日本大震災だった。売り手よし・買い手よし・世間よしという近江商人の心得である「三方よし」の精神にならって社名を三徳屋としたように、大聖寺谷社長は社会貢献にも意欲的で、このときも被災地の役に立ちたいと考え、復興を支援するボランティア活動に参加した。
 このボランティア活動では、がれきの除去を手伝ったが、大聖寺谷社長は自分だからこそできることが他にあるのではないかと強く感じた。ちょうどその頃、業務用カレーの製造を主力とする三徳屋では、レトルトカレーを開発中だったことから、災害時に役立つ食品として、あらかじめ米が入っていて、調理しなくても食べられる商品の開発に乗り出した。
 開発を進める中で大聖寺谷社長が気付いたのは、食物アレルギーの子どもを持つ母親の悩みだった。災害時、避難所の食事はパンやカップ麺が中心となるが、アレルギーの原因となる原材料が含まれていれば食べられず、何が使われているか分からない食事は不安で与えられない。そうした状況を見たことから、食物アレルギーのある人でも安心して手軽においしく食べられる備蓄食を作ろうと考えた。
 商品の完成後、今年5月には熊本地震の被災地である南阿蘇村の避難所を訪問し、400食を配布した。大聖寺谷社長は「たくさんの被災者から“こういった食品が欲しかった”と声を掛けていただき身の引き締まる思いでした」と語る。

 

災害食グランプリを受賞
大聖寺谷勇社長 写真 開発には平成25年度の活性化ファンド事業の後押しを受けながら取り組んだ。
 一番のハードルは食物アレルギーを引き起こす原材料を使えない点だった。これらの原材料にはおいしいカレーを作るために欠かせないものも含まれ、まさにシェフ泣かせの難題だった。とはいえ、食事は楽しみの一つであり、備蓄食といえどもおいしいものを作りたい。大聖寺谷社長はおいしさを実現するため、何度も試作を繰り返した。
 例えば、とろみを付けるために使いたい小麦粉もアレルギーの原因となる。そこで大聖寺谷社長は米をルーに溶け込ませる方法でとろみを出した。しかし、米が溶け込むとご飯の食感が失われてしまう。これを補うため、食感がご飯に近く、長期保存を可能とした加工食品をプラスすることで腹持ちがよくなり、食べ応えもアップした。
 米は石川県産のコシヒカリを使用。季節によっては五郎島金時を入れるなど、地元産の素材にもこだわった。
 気になる味の評価は上々だ。金沢市の防災拠点広場で開催されたイベントで試食を配布したところ、参加者からは「こんなにおいしい備蓄食は食べたことがない」との声が寄せられた。さらに、今年10月に茨城県行方(なめがた)市で開かれた「行方・災害食グランプリ」(一般社団法人防災安全協会主催)では、ごはん類の部門で一般来場者から最多票を集め、見事グランプリを受賞。大聖寺谷社長は「おいしさに確信が持てるようになった」と話す。

 

リゾットなどシリーズ商品を開発へ
 発売以来、三徳屋には多くの引き合いが寄せられ、見通しは明るい。しかし課題もある。一つは価格だ。現在の小売価格は550円(消費税別)。競合する商品と比べ、決して高いわけではないが、さらに競争力を付けるためにはコスト低減が必要であり、今後は量産化によって価格を下げる方針だ。
石川県危機管理監室主催の自主防災組織交流大会へも出店 写真 また、現在、賞味期限は3年に設定しているが、自治体などからは「できれば5年にしてほしい」との声が多い。大聖寺谷社長は「中身は無菌状態なので腐ることはないが、具材の食感、形状が年月を経て変化しないかこれから検証したい」と話す。
 平成28年度には再び活性化ファンド事業に採択され、現在はリゾットなど、温めなくてもそのまま食べられるアレルギー対応食品のシリーズ展開に取り組んでいる。地震や台風など大災害に毎年のように見舞われ、防災に対する意識が高まる中、同社の取り組みにますます注目が集まりそうだ。

関連URL http://www.isico.or.jp/isico/i-maga/isico_v91
備考 情報誌「ISICO」vol.91より抜粋
添付ファイル
企業名 三徳屋 株式会社
事業内容 食品の製造・販売
創業・設立 設立  平成23年3月
もっと知りたい