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増加した観光客の取り込みに成功 2年連続で売り上げが25%アップ

掲載号 vol.92
記事内容

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各種支援制度の利用者に聞く
ISICOでは、企業の成長をサポートするためさまざまな支援制度を用意しています。
制度を利用して事業の拡大に成功した企業の取り組みを紹介します。

 

北陸新幹線の開業やNHK連続テレビ小説「まれ」の放映によって、平成27年度の輪島市の観光客数および宿泊客数はどちらも約30%増加した。これを追い風にしようと、ISICOが派遣する専門家(中小企業診断士)のアドバイスを受けながら商機の拡大に取り組んでいるのが、朝市通りで店舗を構える「輪島洋食屋 わら庄」だ。もともとステーキ丼で人気のある店だったが、一層の売上アップと利益率の改善を目標にメニュー構成の見直しなどに着手し、成果を上げている。

 

人気のステーキ丼 8割の客が注文
わら庄を経営する蕨さん一家 写真 わら庄は店主の蕨(わらび)祥一郎さんが昭和45年に開いた洋食店で、現在は親子2代の夫婦で経営している。

 一番の人気メニューは「わら庄風ステーキ丼」である。平成19年に奥能登2市2町の飲食店が連携して企画した「能登丼」のメニューとして開発したもので、牛肉180グラムを使っていてボリューム満点だ。味付けは輪島市の谷川醸造の醤油と香味野菜を使ったオリジナルソース。熱々の石鍋で提供し、ご飯と牛肉をかき混ぜながら食べるスタイルもユニークだ。
 来店客の実に8割が注文するという人気ぶりで、多い時には1日で90食の注文がある。
 とはいえ、経営は決して楽とは言えない。理由の一つは牛肉価格の高騰だ。ステーキ丼には、豪州産の牛肉および石川県産ブランド和牛「能登牛」を使用しているが、豪州産は円高などの影響で、能登牛は極端に品薄のため仕入れ値が上昇しているのだ。
 また、「ハンバーグステーキ」「豚ロースのグリルステーキ」「エビフライ」といった他のメニューも、ほとんどが何十年も価格を据え置いたままで、「値上げするとお客さんが離れてしまうのでは」と原価が上昇しても転嫁してこなかった。

 

価格とメニュー構成、店名を見直し
メニューの見直しを機にメインに据えた「ビーフシチュー」 写真 こうした状況を打開したいとの思いから蕨さんは、飲食店で店長やエリアマネージャーを務めた経験があり、飲食店の支援を得意とする専門家(中小企業診断士)の指導を受けることにした。
 アドバイスを受けて取り組んだことの一つが価格やメニュー構成の見直しだ。当初、1,580円(価格はすべて税込み)だったステーキ丼は豪州産牛肉の値上がりに合わせ、段階的に見直し、現在は2,052円に設定している。能登牛を使ったステーキも仕入れ値に見合った価格に変更。他の洋食メニューも200~300円の幅で値段を上げ、適正化を図った。
 一方で、そもそも同店は素材を厳選し、ソースやドレッシングも手間暇かけて手作りする昔ながらの洋食店であり、ステーキ丼だけでなく自慢の味をもっと知ってほしいとの思いから、洋食メニューを前面に押し出して目立たせるように品書きを改めた。
 洋食メニューのメインに据えたのは、「ビーフシチュー」と「ビーフカツレツ」だ。ビーフシチューはこれまでも提供することがあったが、仕込みに時間がかかるため欠品が多く、知る人ぞ知る幻のメニューのようになっていた。しかし、おいしいと評判で熱望する常連客も多いことから、これを機に看板メニューの一つに加えた。ビーフカツレツは今まで仕入れている材料で他店にあまりないものをと新たに追加したメニューだ。どちらも自家製ブラウンソースが味の決め手になっている。
 こうした取り組みに合わせて店名の一部も見直した。これまでは「レストラン わら庄」あるいは「グリル わら庄」と名乗ってきたが、洋食店であることがストレートに伝わるように「輪島洋食屋 わら庄」とした。

 

SNSによる波及効果に驚き
輪島市の朝市通りに面して建つわら庄の店舗 写真 平成27年3月に北陸新幹線が開業、平成27年4月から9月にかけてNHK連続テレビ小説「まれ」が放映されると相乗効果によって輪島の観光客数も目に見えるように急増。わら庄も観光客を取り込むことに成功し、平成27年の売り上げは前年に比べ、約25%アップした。ステーキ丼の人気は変わらないが、看板メニューとして打ち出したビーフシチューとビーフカツレツの注文も狙い通りに増えている。
 平成28年に入ると観光客の入り込みは少し落ち着いたが、わら庄の好調ぶりは続いている。平成28年6月に発行された『ミシュランガイド富山・石川』に掲載されるとさらに拍車がかかり、店の前に行列のできる日もあった。香港、中国、シンガポールから来る外国人旅行客の来店も増えた。
 祥一郎さんの長男の之裕さんは「SNSでおいしいとの噂が広まったことが集客につながった。SNSの影響力がこんなにあるとは思わなかった」と驚きを隠さない。
 せっかく足を運んでくれた客を断ることがないようにと昨年夏からは2階のスペースも店舗として利用することにし、4人掛けのテーブル3つを設置。平成28年も前年と同等の売り上げを見込んでいる。

 

今後の課題は利益率の改善
 「観光客が増えるいいタイミングで専門家から助言を得ることができました。2階にも店舗を拡張するなど、自分たちだけではどうしてもおっくうになって、無理だったことも、専門家の指導があったからこそ、実行できました」。そう口をそろえるのは之裕さん、美鈴さん夫妻である。
 家族だけで話し合っていると、どうしてもそれぞれの思いがぶつかり合って、まとまらないことも多かったが、客観的な視点で意見を出してくれる専門家が入ることで、家族間のコミュニケーションもより円滑になったという。
一番人気の「わら庄風ステーキ丼」。能登丼の中でもトップクラスの売れ行きを誇る 写真 ただ、まだ課題も残っている。客足と売り上げは順調に伸びているものの、原価の変動が激しく、改定後の価格でも利益率は改善していない。そのため、今後さらなるメニューのブラッシュアップと利益率の改善を目指す。
 「専門家のおかげでいい波に乗ることができた」と笑顔を見せる之裕さんだが、新幹線やドラマのおかげで客が来てくれた面もあると分析しており、「効果が落ち着くこれからはしっかりと作戦を立てないと勝てない」と新たな一手を繰り出そうと意欲を燃やしている。

関連URL http://www.isico.or.jp/isico/i-maga/isico_v92
備考 情報誌「ISICO」vol.92より抜粋
添付ファイル
企業名 輪島洋食屋 わら庄
事業内容 洋食店経営
創業・設立 設立  昭和45年3月
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