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“軽さ”をプラスしたアウターを製品化 オリジナルブランドで販路拡大へ

掲載号 vol.95
記事内容

チャンスをつかみ、未来をひらく
Seize a chance and open a bright future.

 

合繊織物生地メーカーの羽田(能美市)では、膨らみ感を維持しながら従来よりも生地を軽量化する新技術を確立した。この生地を用いてコートやジャケットといったアウターなどの製品化を進めており、ISICOのサポートも受けて販路の拡大に力を注いでいる。

 

オリジナルの中空糸を開発
日本最大級の繊維見本市に出展し、バイヤーに対して生地だけではなく、アウターなどの製品も提案し、好評を得る 写真 厚手のアウターはもちろん、プリーツ(ひだ)加工を施したスカートなど、ファッション性に富んだ服は、そのデザインからたくさんの生地が用いられる場合が多い。そうなると、生地の使用量に比例してどうしても重さも増してしまうものだが、羽田の手がけた服はそんな印象を覆す。驚くほど軽く、着心地がいいのだ。

 この圧倒的な軽量化を実現するのは、羽田が県内の糸加工メーカーと共同開発した同社オリジナルの「中空糸」を用いた合繊100%の新素材である。中空糸はその名の通り、真ん中が空洞になっており、同社では通常の糸に比べて 中空糸は、C字型に中心部を空洞化することで、大幅な軽量化を実現している 写真1本当たり60%近い軽量化を実現している。中空糸自体は以前からあったものの、従来品の場合、生地を製造していく過程で空洞部分がつぶれてしまい、本来の厚みを損なってしまうという問題があった。その点、同社の中空糸は最終段階の染色工程まで通常の合繊糸として製造し、その後、中心部を抜き取る特殊な加工を施すことで、本来の膨らみ感はそのままで軽量化に成功した。

 

消費者ニーズ盛り込み製品化
 同社が独自の中空糸を共同開発したのは、約4年前にさかのぼる。きっかけは、ファッション性に「軽さ」というプラスアルファの要素を付加できる中空糸に、高い市場ニーズを読み取ったからだ。
 「当社は、決して機能性だけを追い求めているわけではありません。あくまでも今のトレンドやファッション性に重点を置き、消費者のほしい商品を見据えた開発に取り組んでいます」。羽田従之社長はこう話し、最終ユーザーの声を色濃く反映できるよう、10年以上前から「ミルコンバーターシステム」の構築に取り組んでいる。ミルコンバーターシステムとは、企画開発から製造・販売までを担う一貫体制のことで、イタリアの繊維産地でよく見られるシステムだ。従来の賃加工から抜け出し、直接聞いた消費者の意見を、糸や生地の開発から服のデザインにまで幅広く生かしている。
伊勢丹新宿店に期間限定で解説したポップアップショップ。全国の百貨店からも出店の引き合いが相次いだという。 写真 そして、同システムで消費者に最終製品を届けるアパレル事業の核となるのが、平成19年に同社が金沢市の服飾デザイナー・高瀬由紀さんと立ち上げたファッションブランド「YUKI TAKASE」だ。上品さとかわいらしさを備えた大人の女性向けをコンセプトにしたブランドは全国で知名度が高まっており、販路を一層拡大していくため、平成28年度にISICOの活性化ファンドの助成金を活用。今年は伊勢丹新宿店をはじめ、東京や千葉、横浜、大阪、福岡の百貨店8店舗で期間限定の“ポップアップショップ”を展開している。ポップアップショップでは、中空糸を用いたアイテムも豊富にラインアップしており、その軽さと着心地に来店者の評判もよく、同社では大きな手応えを感じている。

 

中東市場向け事業にも注力
 平成25年度からはISICOの活性化ファンドの後押しを受け、以前から進める中東市場向け生地の開発事業のギアを一段階上げている。出荷するのは女性用の民族衣装に用いられる生地で、イランやイラクなどでは、県内産を中心とした日本製が最高級品として愛用されている。
 ただ、国内の製造現場を見ると、必ずしも万全な供給体制が整っているとは言えない。県内産地では、シャトルが左右に往復しながら織り込んでいくフライ(シャトル)織機を用い、家族など少人数で生産する事業者が多いが、これらの現場では高齢化などによって担い手が減少している。フライ織機を製造するメーカー自体もあまり多くなく、現場では老朽化した機械をなんとかやりくりしながら注文に応えているのが実情だ。これからを見据えると、いくら需要はあっても供給できない事態も十分に考えられ、ややもすると生産量の減少が引き金となって中東市場を失うおそれもある。
 そこで同社では、生産性の高いエアジェット織機を改良し、フライ織機ならではの風合いを求めた製造に知恵を絞っており、産地としての活力を維持していくためにも、メイド・イン・ジャパンの品質を守っていく使命を果たしながら、安定した供給量の確保に努めている。

 

若い人が夢を抱く業界に
 今後も確立したミルコンバーターシステムを武器に多彩な事業を展開していく計画で、これらの積極的な動きを通して地元の繊維業界に活力を吹き込んでいくことも大きな目的の一つだ。
「ファッションには国境はなく、海外の人にも見て楽しんでもらえるアイテムです。ゆくゆくは本場ヨーロッパにも進出していきたい」羽田従之社長の写真 「お気に入りの服を身につければ気分が高まるように、ファッションは楽しむためのツールです。感性にかかわる分野だけに数値化できないアナログの世界で勝負でき、それだけにファッション業界にはまだまだ大きな夢が広がっています」と、言葉に力を込める羽田社長。人工知能(AI)の発達で、人間が請け負っていた多くの仕事を機械が請け負っていく社会の到来が予見されている。そんな中にあっても、同社では“人” のスキルや感性が求められるファッションに大きな商機を見出しており、次代を担う人材の採用と育成にさらに力を注いでいく考えだ。

関連URL http://www.isico.or.jp/isico/i-maga/isico_v95
備考 情報誌「ISICO」vol.95より抜粋
添付ファイル
企業名 株式会社 羽田
事業内容 各種生地およびファッションブランド「YUKI TAKASE」の企画開発、製造、販売
創業・設立 設立  昭和36年8月
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