500万円のスタートアップ補助金が交付される最優秀起業家賞に輝いた今井さんは、尿失禁や尿漏れの悩みを解決する「拡張ボディ」(外付け人工膀胱)について発表した。
この製品は男性器に直接装着して使用し、尿が溜まれば、先端をつまむだけで普通に用を足すように排泄できる。生体を模した逆流防止弁がついており、尿漏れパッドやおむつのように尿で服や肌が汚れないほか、臭いもせず、外出先で使用済み製品の廃棄に困ることもない。今井さんは「皮膚よりも柔らかく、伸びやすい素材で作られているので、装着感もほとんど感じない」と話す。基本特許は既に取得済みで、現在は国際特許を出願中だ。
販路開拓は、術後ケアや高齢者向けの市場からアプローチし、仕事やレジャーの最中にトイレに行けない人などもターゲットにする。
小松市在住の排泄ケアの専門家と連携し、尿漏れの状態やライフスタイルなどを確認した上で、最適な製品を提案する相談サービスも提供する。
製品は、金沢大学附属病院などでの臨床実験を経て12月にテスト販売、今年1月に正式リリースし、4月に相談サービスの開始を予定する。売り上げは、5年後に80億円を目指している。
今井さんは父を介護した際、排泄トラブルに悩む様子を見て起業。「尿失禁に悩んでいる人が、今まで通りの生活ができるよう支援をしたい」と意気込んでいる。
三浦さんは自身が代表を務める会社が提供するサービス「はぴこ」を活用した地域活性化モデルの創出についてプレゼンした。はぴこは、特定のコミ供したり、マーケティング活動ができたりするウェブ上のプラットフォームだ。地方創生に取り組む企業や自治体に、はぴこを使ってもらうことで、防災情報の発信など地域住民向けサービスの充実を後押しする。はぴこ利用者は、日用品を最大80%引きで購入できるECサイトなども活用可能で、これらの収益の一部は自治体に還元し、子育て支援などに役立ててもらう計画だ。
整形外科医の米澤さんは現在、骨粗しょう症性椎体(ついたい)骨折や腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさく)の患者を治療するための脊椎固定用インプラントと手術機器を開発している。現在、使われているインプラントや手術機器はほとんどが欧米製で、日本人の高齢者に合わないため、術後にインプラントが緩むなどの不具合が発生し、再手術を余儀なくされたり、合併症を引き起こすことが多いという。米澤さんは臨床活動を中断し、市内の病院と連携しながら開発を進めており、2025年の実用化を目指す。将来的には国内だけでなく国外市場への販路開拓も視野に入れている。
東京出身の伊藤さんは、2023年5月に母の故郷である珠洲市に移住し、コワーキングスペース・交流拠点を運営している。大手企業で人材開発に携わった経験などを生かし、現在は地域人材のテレワークスキルの育成に取り組みながら、オンラインでバックオフィス業務を支援するサービスを首都圏の企業に提供している。これらの事業をさらに拡大するほか、ゆくゆくは首都圏の企業と連携し、奥能登の資源を生かした事業開発を手がけるほか、首都圏の人材を活用し、奥能登の企業の活性化などにつなげていこうと意欲を燃やしている。