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食パン専門店5(ファイブ):豊田安江さん

印刷用ページを表示する更新日:2018年1月10日更新

人生で情熱を賭けられるもの
“人を感動させるパン”を作り続けたい

食パン専門店5(ファイブ)
豊田安江さん

神戸で人気の食パン專門店とブーランジェリーの2店舗で修業し、母親の介護のために富山にiターン。2016年5月、射水市で食パン専門店を開業した。きめ細やかに挽いた北海道小麦100%を使用した、モチモチふわふわの食パンが看板商品。店頭販売はせず、個別注文やネット販売のほか、村の駅、スーパー、SAなどで委託販売している。

起業のきっかけ

神戸で長年事務職に就き、趣味でおいしいパン屋巡りやパン作りをしていました。でも、お店と同等の材料を使ってもその味を再現できず、「この違いって何だろう、きっと特別な技術があるはず」と思っていました。そんな時、衝撃的な食パンと出会ったんです。ふわっと溶ける口溶け、焼くと外側はカリッ、でも中はモチモチ。この食パンを求めて毎日行列ができる評判の食パン専門店でした。「ここで働きたい!」と即座に思って面接を受けたら、未経験者なのに採用していただいたんです。こだわりのパンの技術を学ぶ毎日はそれは楽しくて、以前の仕事では得られなかった充実感を感じていました。
豊田さんの写真

その頃は、富山在住の実母の体調が悪化し、介護のために富山への移住を考えていた時期でもありました。周辺の環境を調べながら、大好きなパンについての情報も探しましたが、食パン専門店は県内になく、こだわりのパン屋も近くにはないようでした。「富山の実家で食パン専門店を開業できるかもしれない」。パン屋で働きながら漠然とそう思うようになり、1年後に富山への移住が決定すると、神戸の創業塾にも通い始めました。

そんなとき、また神戸でさらなる衝撃のパン屋に出会ってしまったんです。食パン専門店ではありませんでしたが、やはり食パンが驚くほどおいしく、酵母の香りが漂う食べたことのない味わいでした。運命的なものを感じて面接に行き、1年後に富山に移住することを伝えたにもかかわらず、なんと採用に。1日15時間勤務が当たり前のハードな職場でしたが、シェフはパン作りに人生を賭けているような方で、「自分の持っているすべてを伝える」と熱心に指導してくださいました。約1年でしたが、今までのパンの疑問がすべて解決していく濃密な時間でしたね。ここで学んだすべてが今の私の「財産」と思っています。この経験を糧に、2016年5月に親戚宅を工房に食パン専門店5(ファイブ)をオープン。店舗を持たない注文販売のみのお店としてスタートしました。

強みとやりがい

周囲に食パン専門店がなかったことはもちろん好条件ですが、それよりもまず「富山には食パンが合う」と考えたんです。欧米人はチーズやパテ、赤ワインに合わせて香りやクセの強いパンを食べる嗜好性ですが、日本人にはクセのない“ご飯のような”パン生地が好まれる傾向があります。富山になじむのは後者のほう。私が作るパンはふわふわモチモチの食感で、年齢を問わず日本人なら誰もがおいしいと感じる風味を追求しました。神戸の製粉所から仕入れるきめ細やかな北海道産小麦だからこそ実現できる味です。材料・製法にとことんこだわっているので、価格は原価を考慮してぎりぎりに抑えた1本700円に設定しました。
食パンの写真

開業資金は公庫を利用しました。食パン製造には、ホイロ・オーブン・ミキサーなどの設備投資にまとまった金額が必要だったからです。資金の相談に公庫や商工会議所などいろいろな機関に足を運びましたが、最初はどこでも「そんな高い食パンは売れないほうがいいからやめたほうがいい」と反対されました。それでも粘り強く相談し続けたところ、神戸の創業塾で知った公庫の方から、事業計画書の書き方や強みの説明の仕方などを親身にアドバイスいただけたんです。そのおかげで富山の公庫で満額の融資を得られ、開業にこぎつけることができました。「私は人に恵まれている」。そう感じためぐり合わせでしたね。

富山でも開店と同時期に起業塾に通い始めました。販路を見つけるために、同塾に食パンを持って行ってプレゼンしたり、ご近所のお宅や会社・工場で配るうちに次第に口コミで広まっていきましたね。また、新聞や子育てサークルのフェイスブックで紹介されると爆発的に広がり、1回に20~30本まとめ買いしてくれるお客様もおられました。さらにタウン誌やテレビで紹介されると一気に注文が増え、「うちの店に置かせて欲しい」というお話を続々といただくように。現在は5店舗に定期的に納品しているため、1日約300本の食パンを製造しています。ほぼ毎日、夜23時~翌夜20時まで食パンを作り続ける日々。でも皆さんの「おいしい」「ありがとう」という言葉を支えとして頑張っています。

これからやっていきたいこと

「いつかパン屋をやりたい」と思ってはいたものの、具体的にどんなパン屋かがはっきり見えたのが2番目のパン屋で修業したときでした。パン作りに妥協しない、安全なおいしい食材を使い細部にまで手を抜かない。それを同店のシェフの姿勢から教わりました。パンには作り手の人柄が出てしまうんです。だったら私がこのお店のパンを食べて衝撃と幸福を感じたように、“人を感動させるパン”を作り続けていきたいと思いました。私の父は寿司職人、兄はデザイナーのものづくり一家。そのDNAが流れているのかなぁと。子育ても一段落し、介護しながら残りの人生で自分が情熱を賭けられるものを探していたのかもしれません。

これからは工房を広くして、食パン以外のパンの種類も増やして、お客様にもっと喜んでいただきたいですね。特にあんこのパンは人気があるので充実させたい。また最近講習会で訪れた台湾で食パンが大人気でした。アジア人はモチモチふわふわの食パンが大好きですが、「本当においしい食パン」はまだ知られていません。今後チャンスがあれば、海外にも販路を広げていければいいなと考えています。
エシレバターパンの写真

食パン以外にもレパートリーは豊富。こちらはフランス産の発酵バター「エシレバター」を使った贅沢なパン

起業する女性へのメッセージ

これまでの経験から気づいたのですが、「夢は多くの人に語るべき」。今も「店を移転したい」「広くしたい」とちらりと言っただけで、どんどんアドバイスが集まってきます。こうして実現に至ったことが何度もありました。目標がはっきりしてなくてもいいんです。ぼんやりと夢を語るだけでもヒントが得られたり、道が開いてくと思いますよ。

私は「すべてがチャンス」だと思って行動するようにしています。今直接的な利益がなくても、きっかけになったり、つながったり、後から開けてくることがあります。そう思うとやってることが苦じゃなくなる。そして、やり出したらあきらめず続けること。これはフルマラソンを完走した経験から学んだんですが、常に「大丈夫」とプラス思考を保つことで、なんとか走り続けられるものです。一人で抱え込まないことも大切。できないことは専門家に助けを求めればいいと思いますよ。また、しなくてもいいことはやらない。女性は家庭と仕事の両立を完璧にやろうとしがちですが、それではパンクしてしまいます。洗濯物が山積みになっていても生きていけます(笑)。今優先すべきことに集中して、自分らしく進んでいったらいいんじゃないでしょうか。

豊田さんのある 1 日の過ごし方

・23時00分 仕込み開始
・13時00分 仕込み終了 順次発酵・焼き上げ
・16時00分 袋詰め
・17時00分 夕食
・18時00分 メールチェックなど
・19時00分 帰宅・入浴
・20時00分 就寝
・22時30分 起床・出勤

●食パン専門店5(ファイブ)
https://www.facebook.com/shokupan5/