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多くの企業で人手不足が深刻化している。その背景には、少子高齢化による人口減少があり、今後、人材の獲得競争はさらに激化しそうだ。言うまでもなく、企業にとって働き手は成長の原動力であり、確保できなければ商機を失うことにつながりかねない。では、中小企業が人材を採用するには、どのような手立てが有効なのだろうか。今回の緊急特集では、これまでの取り組みにひと工夫を加え、人材獲得に成功した県内3社の取り組みを、ISICO産業支援課の矢部敏明アドバイザーの助言を織り交ぜながら紹介していこう。
ところで、求職者は賃金や労働時間、休日などの待遇や仕事の内容だけで、応募を決めるわけではない。ハローワーク金沢のアンケート調査によれば、求人票に書かれていない情報の中で知りたいことの第1位は「職場の雰囲気」だ。
そこで、次に紹介するのが、ITを活用して職場の雰囲気などを発信し、採用活動に役立てている野々市運輸機工の取り組みである。
工作機械や鋼材など重量物のトラック運送を手がける同社がIT活用に力を入れ始めたのは2年前にさかのぼる。「インターネットには大きな潜在能力を感じていたのですが、それまではまったく活用できていなかった」(吉田章専務)ことから、平成27年6月にホームページをリニューアル。それに合わせ、フェイスブックでの情報発信をスタートした。
フェイスブックには、ほぼ週に1度のペースで投稿する。社内で行った会議や清掃活動、トラックのメンテナンス、地元児童による仕事体験、社員の笑顔ナンバーワンをみんなで決める「N-1グランプリ」など、投稿内容はまさに会社の日常だ。
「当初は採用を意識していたわけではない」と話す吉田専務だが、ハローワークの求人票でもホームページの閲覧を呼び掛けると、「社内の雰囲気の良さが伝わってきたので」と応募して来る人が増え、「未経験でも働きやすそう」と異業種から転職を希望する人も応募してくるようになった。
では、情報発信する際に何かこつはあるのだろうか。吉田専務は「単に開催したという報告だけにとどまらず、そこに込められている思いや、やってみてどうだったかという考察まで、書くように心がけている」と話す。また、入社後に「こんな会社だと思わなかった」というミスマッチが生じないよう、飾らずに、ありのままの姿を記事にするようにしている。
時にはネガティブな情報も掲載する。例えば、ある日の投稿では、事故が発生し、社員が集まって再発防止に向けた解決策を話し合う「ゼロの集い」を開いたことを記事にした。事故の情報を掲載するだけでは会社のイメージダウンにつながりかねないが、対策を明らかにすることで、企業の姿勢が伝わり、顧客に安心感を与えることにつながっている。また、吉田専務は「マイナスの情報も隠さず載せることで、サイトの情報全体の信頼性がアップする」と話す。
「少子化や情報化により、採用環境は大きく変化しています。若者は給料より休日を望み、転職にも抵抗が少ない。だからこそ、採用に関し、今までと同じ思考では、必要な人材が採れなくなります。まずは経営者の皆さんにそのことを認識してほしい」と力を込める矢部アドバイザー。採用方法のリセットに向け、ぜひISICOを利用してほしい。
企業名 | 野々市運輸機工 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和41年1月 |
事業内容 | 一般貨物自動車運送事業 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.94より抜粋 |
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掲載号 | vol.94 |