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九谷焼の魅力が詰まった指ぬき 23人の作家が100点を競作 ~(株)九谷陶泉

印刷ページ表示 更新日:2017年1月6日更新

チャンスをつかみ、未来をひらく
Seize a chance and open a bright future.

百貨店向けに九谷焼の卸販売を手がける九谷陶泉が、初めて自社オリジナル商品として開発した「クタニシンブル」の売れ行きが好調だ。シンブルとは裁縫用の指ぬきのこと。高さ約3センチ、最大直径約2.5センチの小さな素地に、23人の作家が手描きし、全部で100種類の絵柄を展開する。インテリアとして、あるいはコレクターズ・アイテムとして人気を集め、九谷焼の新たなファンを獲得することに成功した。

白く明るい素地を使用

「クタニシンプル」とシンブルを利用して作ったタッセル 写真 裁縫する際、指先を守るために使うシンブルは、ヨーロッパでは女性に幸運をもたらすアイテムとして知られている。実用的な革製や金属製のほか、陶磁器製は鑑賞用として人気で収集家も多く、イギリスのウェッジウッド、ドイツのマイセンといった有名メーカーもさまざまなデザインのシンブルを作っている。
 指先ほどの大きさに九谷焼の魅力が凝縮されているクタニシンブルも部屋に飾ったり、コレクションしたりして楽しんでもらおうと企画された商品だ。誰もが一目を置く巨匠から新進気鋭の若手まで、絵付けには23名の作家が参加。全100種類の絵柄は、色絵や青手、赤絵といった伝統的な絵付けを施した「Tライン(トラディショナルライン)」と、伝統の技術をベースに現代的な感性で絵付けした「Cライン(コンテンポラリーライン)」に大別される。
 主にTラインの素地には、従来の九谷焼に使われる小松産の花坂陶石を使用。Cラインには、青みがかった花坂陶石の素地に比べ、白く明るい印象に仕上がる「酸化白色坏土(はいど)」を使った。ちなみに酸化白色坏土は県工業試験場九谷焼技術センターが開発したもので、クタニシンブルが実用化第一号となる。
 高島屋の日本橋店、新宿店および玉川店をはじめ、帝国ホテル、三省堂、金沢の九谷焼諸江屋、石黒商店で常時販売しており、価格は5,000円から60,000円である。平成28年2月に本格的に販売を開始し、累計で約500個を販売した。中には一人で5~6個をまとめ買いする購入者もいるという。

ヨーロッパ旅行の土産をヒントに

 「既存の九谷焼ではなく、何か新しい商品を提案してほしい」。開発のきっかけとなったのは、取引先の百貨店から寄せられたそんな要望だった。いくつかの商品を企画するうちに山元茂雄社長がひらめいたのがシンブルだった。
 山元社長は10年前、ヨーロッパへ旅行していた中で、スペインの美術館で土産用に陶器製のシンブルを買い求めたことがあった。その一つが山元社長の自宅に保管されていて、それがヒントとなった。情報収集を続けると、シンブルはヨーロッパでは女性のお守りで、ペンダントトップとして身に付けることもあり、世界中に200万人以上のコレクターがいるアイテムであることが分かり、商品化に踏み切った。
 開発には活性化ファンドの助成金を活用した。山元社長は「自己資金だけでは失敗を恐れて、開発をスタートさせることができなかったと思います。ISICOの後押しがあったので、何とか挑戦することができました」と振り返る。石川県の魅力ある地域資源を活用した新ビジネスの創出を後押しするという活性化ファンドの趣旨に照らし、小さくても九谷焼本来の高品質を実現すると同時に、多くの作家や技法を広く紹介しようと、これまでの事業で培ってきた人脈を生かし、絵付けを依頼した。
 シンブルだけでなく、商品ロゴやパンフレット、パッケージにもこだわり、制作にあたってはデザイナーを起用。ISICOの勧めで商標登録も済ませた。

異業種連携で新たな可能性を開く

東京インターナショナル・ギフト・ショーに出展し、新たな取引先を開拓した 写真 販路開拓では、日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」の中でISICOが設けるブースに、平成27年度から2年連続で出展。この時点ではまだ売れるかどうか半信半疑だったが、バイヤーからの商品に対する評価は高く、これまで付き合いのなかった百貨店や雑貨店などから多くの引き合いが寄せられた。
 ギフト・ショーでは思ってもみない出会いもあった。京都・西陣の刺繍・織編物素材専門店からクタニシンブルを使ってタッセル(カーテンなどに付ける房飾り)を作りたいとの提案を受けたのだ。吊り下げ用の糸と房糸は磁石で接合する仕組みで、好みのシンブルや房糸を簡単に組み合わせることができる。
 「私たちには九谷焼をパーツとして使うという発想がありませんでしたし、固定観念にとらわれるあまり、九谷焼が持つ潜在能力を生かし切れていなかったなと感じました」。そう話すのは山元歩専務で、今後は異業種とのコラボレーションにも積極的に取り組み、九谷焼の可能性を広げる考えだ。

開発を通じて考え方が前向きに

 九谷陶泉では、クタニシンブルのバリエーションをさらに増やそうと試作に取り組んでいる。一つはシンブルの上部に招き猫や干支を付けたものだ。購入者から「ヨーロッパには飾りを付けたシンブルがある」と教えてもらったことをきっかけに企画を開始。招き猫や干支の部分は九谷焼の置物を原型として、県工業試験場と連携して3 次元プリンターを使って型を起こした。また、東京オリンピックに向け、外国人観光客向けに富士山や桜など日本らしいモチーフの商品も開発する計画だ。
 このほか、オリジナル商品として、「九谷焼ロディ」も開発した。ロディとはイタリア生まれの馬をモチーフにした乗用玩具。「娘夫婦の出産祝いとして贈るものがほしい」との声を受け、イタリアの製造元とライセンス契約を結び、鑑賞用にサイズを小さくして製造した。これまでに約700体を販売する人気ぶりだ。
山元茂雄社長と山元歩専務 写真 「九谷焼業界全体の売り上げはピーク時の3分の1ほどに落ち込み、廃業も多い。これまではどうしても縮小均衡型の考え方になっていたが、クタニシンブルの開発をきっかけに、事業に前向きに取り組むことができるようになりました。切り口を工夫すればまだまだニーズはあると実感できたので、これからも九谷焼の良さを引き出す方法を考えていきます」(山元社長)。九谷焼の新たな魅力を発信しようと奮闘する二人にエールを送りたい。

企業情報

企業名 株式会社 九谷陶泉
創業・設立 設立 昭和11年
事業内容 九谷焼の卸販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.91より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.91


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