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石川県内に8つの直営店やフランチャイズ店を構え、自家焙煎コーヒーが人気のキャラバンサライでは、活性化ファンドを利用して能登海洋深層水で抽出した「天然ミネラルアイスコーヒー」などを開発し、夏の定番商品として成長させた。また、コーヒーだけにとどまらず、加賀市内の茶畑で採れる「加賀の紅茶」を使ったブランデーケーキを発売するなど、地域色豊かな商品開発に取り組み、企業の成長につなげている。
キャラバンサライの天然ミネラルアイスコーヒーは有機栽培されたコーヒー豆を焙煎し、脱塩済みの能登海洋深層水で抽出した商品だ。無糖タイプとブラジル産の有機黒糖で甘みを付けた有糖タイプがある。
コーヒー豆はあまり酸味がなく、ほどよい苦みのあるマンデリンなどをブレンド。これを旨み成分や適度なオイル成分を残しながら雑味を取り除くネルドリップ方式で、少量ずつ丁寧に抽出する。ミネラルが豊富で清浄性に優れた能登海洋深層水を使うことによって、コクはあるがくどくはなく、すっきりとした飲みやすい味に仕上げている。
主な販路は同社の直営店などでの店頭販売やネットショップで、毎年2月から8月にかけて限定販売している。1リットル入りで無糖タイプが750円、有糖タイプが850円と、一般的なアイスコーヒーと比べると3割ほど高いがおいしいと評判で、毎年1万本も売れるヒット商品になっている。
寒さが厳しい2月でも発売を待ちわびたようにすぐに注文が入るほか、冬の間も飲みたいからと夏の終わりにまとめ買いする人もいる。お中元を中心にギフト商品としても人気で、贈られた人が味を気に入って、その後、12本入りのケースで注文することも多い。
天然ミネラルアイスコーヒーの原点には「地域の特色を打ち出した商品を作りたい」という西岡憲蔵社長の思いがある。とはいえ、石川県内でコーヒー豆を栽培できるわけでもなく、西岡社長は金沢をイメージして独自にブレンドしたコーヒー豆に「百万石」「加賀美人」などのネーミングを付けることから取り組みをスタートした。
「もっと地域性を色濃く出せないだろうか」。そう考えた西岡社長が最初に目を付けたのが奥能登産の塩だった。日本では考えられないが、エチオピアではコーヒーに塩を入れて飲む習慣がある。西岡社長はそれを参考に奥能登の塩を使って日本人の味覚に合うコーヒーの開発を目指したが、とても満足いく味にはならなかった。次に西岡社長が着目したのが能登海洋深層水で、平成21年度活性化ファンド事業の後押しを受け、無糖タイプのアイスコーヒーとゼリーを商品化した。
当初は既成のガラス瓶にラベルシールを貼って販売していたが、予想以上に売れたことから、軽量、コンパクトで輸送時や陳列時にメリットが多い上、遮光性が高く品質を維持しやすい紙パックに切り替えた。「助成金のおかげで試作だけでなく、パッケージデザインにもしっかりとお金をかけることができたので、長く使えるいいデザインに仕上がりました」と西岡社長は笑顔を見せる。
さらに、平成25度には再度、活性化ファンド事業に採択され、店頭で接客する社員から寄せられた情報をヒントに有糖タイプの開発に取り組んだ。無糖、有糖の2タイプがそろったことに加え、会員登録している3万人の顧客にダイレクトメールを送ったり、新規客の獲得に向け、タウン誌に広告を掲載したりするなど、PRに力を入れた結果、売り上げは一気に倍増し、夏の定番商品として定着していった。
キャラバンサライには洋菓子製造部門もあり、コーヒーに合うスイーツの開発も手がけている。人気となっているのが「金澤ロワイヤルブランデーケーキ」で、既存の珈琲(コーヒー)味やカカオ味に続き、「加賀の紅茶」味を発売した。開発にあたっては平成27年度活性化ファンド事業の助成金を利用した。
蒸して柔らかくした茶葉をブランデーに漬け込んで作った芳醇(ほうじゅん)な紅茶リキュールを染み込ませたケーキの生地には、乾燥させて細かく粉砕した茶葉も練り込んであり、ブランデーと紅茶の風味を堪能できる大人向けの味わいとなっている。
昨年12月に本店で先行販売し、本格的には今年2月から直営店やフランチャイズ店、インターネット通販サイト「楽天市場」で販売を始めた。珍しさもあって売れ行きは好調で、西岡社長は「スイーツがよく売れる秋以降、力を入れて販売していきたい。ブランデーケーキはカステラやバウムクーヘンと違って競合が少ない。ロングセラー商品に育ってほしい」と期待をかける。
ちなみに、天然ミネラルアイスコーヒーは平成24年度、加賀の紅茶ブランデーケーキは平成28年度の石川ブランド認定製品に選ばれている。「販促活動を展開する際、こうした認定があると売りやすくなります。贈られた方も県がお墨付きを与えた商品の方がうれしさが増すと考え、ギフト商品には必ずその旨を明記しています」(西岡社長)。
販路開拓では、ISICOが香林坊大和(金沢市)の地下1階で運営する常設アンテナショップ「石川のこだわりショップ かがやき屋本店」も一役買っている。かがやき屋本店は、県内中小企業が開発した商品が一堂に集まるショールームのような役割を果たしており、キャラバンサライでもアイスコーヒーやブランデーケーキを出品したところ、視察に訪れた大手百貨店や商社のバイヤーから、サンプルや見積もりを送ってほしいといった依頼が寄せられ、首都圏に展開するスーパーマーケットなどとの商談が成立している。
また、北陸新幹線の開業も追い風で、近江町いちば館内にある武蔵店の商品販売は好調だ。さらに、コーヒーの消費が全国的に見ても伸びているとともに、金沢市民のコーヒーや菓子類の消費額が高いとこともあって売り上げは右肩上がりだ。
今後について西岡社長は「ブランデーケーキに続いて、加賀の紅茶を使った商品を開発していきたい」と意欲を見せる。また、能登海洋深層水を海水のまま使うプランも温めており、「以前、コーヒー豆を塩水で洗ってから焙煎してみたのですが、しょっぱくて全然おいしくありませんでした(笑)。でも、まだまだ諦めませんよ」。商品開発にかける西岡社長の意欲はとどまることを知らない。
企業名 | キャラバンサライ 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和62年5月 |
事業内容 | コーヒー豆の卸販売・小売販売、喫茶店の経営、洋菓子の製造・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.90より抜粋 |
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掲載号 | vol.90 |