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塩分少なめの新感覚ぬか漬けを商品化 地元産の甘エビ、バイ貝、タコを活用 ~油与商店

印刷ページ表示 更新日:2016年4月6日更新

目指せ!石川発の人気商品
ヒットのタマゴ 

「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択企業、各種展示会の出展企業の商品等にスポットを当てます。

石川の伝統的な味として知られるイワシやフグのぬか漬けを約150年前から作り続けている油与商店。昨年3月には北陸新幹線開業に合わせ、甘エビ、バイ貝、タコを使って、塩気が少なくマイルドな味わいの「金沢海鮮ぬか漬け」を新たに商品化した。昔ながらの塩辛いぬか漬けが苦手な消費者にも好評を博すほか、石川県から「プレミアム石川ブランド製品」に認定され、売れ行きにも拍車が掛かっている。

1、2日の浅漬けで魚貝の旨みを引き出す

杉桶を使ったパッケージ。「ゴミの分別が面倒」との声を受け、杉桶を使わない簡易な包装も用意している。 写真 金沢海鮮ぬか漬けは、油与商店のすぐそばにある金沢港や金石港で水揚げされた甘エビ、バイ貝、タコをとれたての状態ですぐに下処理し、ぬかに漬け込んだ商品である。
 ぬか床はイワシを漬け込んだ後のものをベースに、酢を加えるなど改良し、塩分を下げて使う。伝統的なぬか漬けは1年ほど漬け込むが、この商品は1、2 日の浅漬けだ。こうした工夫によって、塩辛くなく、新鮮な魚貝の旨みを十二分に引き出したぬか漬けが完成する。
 ぬかを落とさずにそのまま食べることができ、ご飯のお供や酒の肴さかなにぴったりで、カナッペやシーフードサラダの具材にしてもおいしい。
 北陸新幹線が開業した昨年3月14日に同社の店頭とネットショップ、楽天市場で販売を開始。昨秋からは石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」でも取り扱いを始めた。
 商品開発をリードした寺尾高明代表は、「伝統的なぬか漬けとはまったく違うまろやかな味わいで評判は上々」と胸を張り、発売以降、徐々に売り上げを伸ばしている。
 昨年12月には歳暮に最適の商品として新聞折込チラシを使ってPRした結果、1カ月で3種類を詰め合わせた商品が100セット以上も売れるなど、好評を得ている。

消費者の健康志向に対応 塩分を3分の1に

地元でとれた新鮮な甘エビ、バイ貝、タコを使った「金沢海鮮ぬか漬け」 油与商店が金沢海鮮ぬか漬けを開発した背景には、消費者のぬか漬け離れがある。
 そもそも保存食として考案されたぬか漬けは塩辛いのが特徴だが、健康志向、減塩志向が高まるなか、敬遠する消費者も増えているのだ。昔ながらの味を守り続ける一方で、そうした消費者のニーズに応えられるような新しいタイプのぬか漬けを作ろうと考案したのがこの商品だった。
 平成25年度の活性化ファンド事業に採択され、その助成金を活用して取り組んだ開発では、まず、ぬか漬けに適した商品選びからスタートした。
 真っ先に候補に挙がったのは地元で「かないわ香箱」としてブランド化が進められているコウバコガニだった。しかし、ぬかに漬け込むと身がパサパサになってしまうことから商品化を断念。その後もさまざまな魚貝を試した上で、ぬか漬けによって素材の味が際立つ甘エビ、バイ貝、タコに決定した。
 ぬか床や漬け込む条件に関しては、食品コンサルタントにもアドバイスを仰ぎながら、開発を進めた。
 ぬかのベースとなったのは、同社が長年のノウハウで作り上げた糀(こうじ)や唐辛子、自家製いしるなどを混ぜ合わせたものだ。新商品では、これにイワシを漬け込み、発酵、熟成が進んだものを再利用している。
 ただし、このまま漬け込むと塩分濃度が高いため、酢を入れて殺菌効果を維持しながら、塩分濃度を抑えることにした。酢をどの程度の割合で入れるか、漬け込む期間はどうするかなど、数え切れないほどのパターンを試し、最もおいしく漬け込むことのできる条件を絞り込んだ。
 この結果、懸案だった塩分濃度を従来商品の3分の1に下げることに成功した。
 なお、パッケージは同社がぬか漬け製造に使っている杉の木で作った桶を小型化したものを採用。伝統的な製造方法をイメージしてもらえるようにした。

プレミアム認定を機に知名度がアップ

 完成後には、「せっかく自信を持って勧められる新商品が出来上がったのだから、試しにチャレンジしてみよう」(寺尾代表)と、県内中小企業が開発した製品の中から、技術の独自性や新規性等において優秀な製品を県が認定する「石川ブランド製品」に応募。その結果、特に魅力的なブランドとして将来の成長が期待できる製品に与えられる「プレミアム石川ブランド製品」の認定を受けた。
 寺尾代表の妻の寺尾幸代副店長は「プレゼンテーションがうまくいかなかったので、まさか選ばれるとは思いませんでした。味を認めてもらえて本当にうれしかったです」と振り返る。
 プレミアム石川ブランド製品に認定されてからは、新聞やテレビ、雑誌の取材が相次ぎ、商品の知名度もアップし、売れ行きに拍車がかかった。認定企業への特典の一つである専門家によるフォローアップ支援も受け、現在は大手百貨店との商談も進んでいる。
 昨年11月にはISICOが香林坊大和地下1 階で常設する「石川のこだわりショップ かがやき屋本店」の店頭で試食販売を実施。寺尾副店長は「一口食べて、 “おいしい”とびっくりしていただき、購入してくれる方もいました」と手応えを感じるとともに、「食べてもらわないと魅力は伝わらないので、できれば銀座のアンテナショップでも試食販売してみたい」と意気込む。
二人三脚で新商品の開発に取り組んだ寺尾高明代表と寺尾幸代副店長 写真 寺尾代表によれば、金石・大野地区にはかつて魚のぬか漬けを手がける業者が20軒ほどあったが、今では油与商店がただ1軒残るだけである。石川の伝統的な食文化を守り、伝えるためにも、現代の消費者ニーズに合わせた商品開発は不可欠だ。寺尾代表は「今年8月をめどに、商品ラインアップを新たに3種類増やしたい」と話し、意欲的に試作を続けている。

企業情報

企業名 油与商店
創業・設立 創業 享保元年(1716年)頃
事業内容 水産加工物の製造、販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.87より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.87


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