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GFRPで消防車を軽量化 水の積載量を大幅にアップ ~長野ポンプ(株)

印刷ページ表示 更新日:2016年3月8日更新

新たなる挑戦

いしかわ次世代産業創造ファンド(次世代ファンド)や国のプロジェクトを活用したり、知的財産権に関する取り組みなどを行い、成果を上げた企業を紹介します。

GFRPを取り入れて軽量化した消防車の試作車両 写真消防車を製造、販売する長野ポンプは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を使った新型車両を完成させた。鉄骨と鉄板で作られていた従来型の車両に比べ、40%以上も軽量化されており、その分、多くの水を積めるようになっている。GFRPの消防車は日本初で、難燃性のフェノール樹脂を使ったGFRPでの製造は世界初の試みだ。金沢をはじめ、大型の消防車が入れない細い道路が多い、市街地での利用を見込んでいる

中規模火災を1台で消火

 消防車は自動車メーカーが専用シャシー(車台)とエンジンや運転席のある駆動部分を製造し、そこに長野ポンプなど消防車メーカーがポンプや水槽を取り付けたり、それらを覆うボディを組み付けたりして完成となる。
 一般的な消防車のボディ部分は、鉄骨で組み上げた骨格に鉄の外板を取り付けて作られ、その中に水槽を搭載する。長野ポンプの新型車両はその骨格や外板、水槽をGFRPで一体化させたモノコック構造となっている。3トントラックをベースにしたシャシーを使っており、消防車としては小型に位置づけられる。
 GFRPは重量比で鉄より強く、アルミより軽いのが特徴だ。そのため、新型車両は消防車として十分な強度を保ちながら、従来型に比べて40%以上も軽量化することに成功した。
 その結果、積載できる水の量は、これまでの小型消防車が700~900リットルであるのに対し、1500リットルまで増せるようになった。
 長野幸浩社長は「焼損床面積20平方メートルほどの中規模火災であれば、毎分400リットルの放水を3分間継続すれば消火できると言われています。つまり、新型車両は、これまでの小型消防車では対応できなかった中規模火災を消火する能力があるのです」と胸を張る。
 GFRPは鉄より高価だが、従来に比べ、工数が40%ほど削減できるため、価格は既存の消防車と同等にできる見通しで、平成29年度の販売開始を目指す。

タイの消防車が開発のヒントに

 長野ポンプが車両の軽量化に取り組み始めたのは約6年前にさかのぼる。
 「安全対策を強化すればするほど、消防車は重くなります。とはいえ、車両総重量が決まっていますから、車体が重くなれば、積載物を減らすしかなく、軽量化は大きな課題となっていました」(長野社長)。
 最初に長野社長が目を付けたのがアルミだった。日本の消防車が鉄製なのに対し、ヨーロッパではほとんどがアルミ製だ。そこで、長野社長は消防車メーカーとしてドイツ最大手のツィグラー社と技術提携し、平成26年春からアルミ製車両の製造、販売に乗り出した。
 ただ、ツィグラー社の技術は中・大型消防車には最適だが、日本で主流の小型車では解決すべき課題が山積していた。そこで長野社長が着目したのがGFRPだった。この研究開発をISICOのいしかわ次世代産業創造ファンド新技術・新製品研究開発支援事業に申請したところ、採択された。
1台1台、ユーザーの要望に応じてオーダーメイドする 写真 これまで扱ったことのない素材だけに、製造に関するノウハウがなく、開発は難航した。ヒントを探すため、ドイツで乗用車用に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を製造する工場も視察した。しかし、乗用車と違って消防車では一品一様のものづくりが求められる。そのため、金型を用いた量産向けの製造方法を取り入れることはできなかった。
 光明が見えたのは、ツィグラー社のパートナー企業であるタイのチェース社との出会いだった。タイ最大手の消防車メーカーであるチェース社では、既にGFRPを使った車両の製造に取り組んでいたのだ。それは発泡ウレタンをGFRPで挟んだサンドイッチ構造のパネルを箱のように組み立て、接合していく作り方だった。
 「これならオーダーメイドに対応できる」と確信した長野社長はこのパネル工法を採用し、日本初のGFRPモノコックフレームを完成させた。

難燃素材を開発しより安全性を向上

 ただし、大きな問題が一つあった。それはチェース社が使うGFRPは不飽和ポリエステル樹脂を使っている点だった。不飽和ポリエステル樹脂は加工しやすいが燃えやすく、燃えた場合には、有毒ガスが出る。これでは危険と考えた長野社長は、運転席の屋根部分だけは難燃性に優れたフェノール樹脂を使ったGFRPを採用することにした。
 フェノール樹脂は加工が難しく、寸法安定性が悪いというデメリットがある。そのため、タイでは使われていなかったのだが、人命には代えられない。そこで、航空機の内装材を製造するなど繊維強化プラスチック(FRP)を使った技術開発に豊富な実績を持つ(株)ビルドス(小松市)と連携し、フェノール樹脂を使ったGFRPパネルを作り上げた。
 GFRPを使った試験車両の強度試験は石川県工業試験場が担当。有限要素法(FEM)による解析で、基準の3倍の強度が確保されていることが明らかになった。
 長野社長は「助成金をいただいたので、何とかやり遂げなければならないと必死に開発に取り組みました。ISICOにはいいきっかけを作ってもらったと感謝しています」と開発を振り返る。
 また、開発を進めていく中、デザインについては、「無骨でなく、子どもたちに夢を与える形にしてほしい」との話もあったことから、外観デザインを世界各国でデザイン賞を受賞するドイツのスカラ・デザイン社に依頼。これまでの消防車とはひと味違う洗練された外観に仕上げた。
長野幸浩社長 写真 日本では現在、約2万3,000台の消防車があり、このうち約70%を小型が占めるだけに商機は大きい。長野社長は「画一的なものづくりをしていては、中小企業は生き残っていけない。常に技術革新に取り組んでいきたい」と力を込め、GFRPよりもさらに軽くて強いCFRPを使った消防車の開発も視野に入れている。

企業情報

企業名 長野ポンプ 株式会社
創業・設立 創業 昭和9年5月
事業内容 消防車の製造、販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.86より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.86


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