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専門家による分析結果を生かし、ベッドや高圧受電設備を導入。快適性アップで顧客満足度向上へ ~(有)かよう亭

印刷ページ表示 更新日:2015年10月16日更新

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各種支援制度の利用者に聞く

ISICOでは、企業の成長をサポートするためさまざまな支援制度を用意しています。
制度を利用して事業の拡大に成功した企業の取り組みを紹介します。

山中温泉にある「かよう亭」は、自然豊かなロケーション、源泉掛け流しの湯、地元の素材や器にこだわった食事などが高く評価され、国内外から多くのリピーターを集める人気の旅館だ。昭和51年の開業以降、利益を追わない、規模を大きくしない、宣伝をしないといった独自の経営路線を貫く一方、近年ではISICOの支援制度を活用し、顧客サービスの一層の向上に努めている。

宿泊客の満足感こそ旅館の一番の資産

上口昌徳社長 写真 約1万坪の敷地に、わずか10室という静かな温泉宿は、宿泊客のおよそ7割をリピーターが占めている。その中には、滞在時に次の予約を入れたり、何日も連泊したりする客も少なくない。約2割は外国人客で、今年4月以降に限って見ても、実に21カ国から宿泊客が訪れている。
 人気の理由は、宿泊客にいやしと安らぎ、生きる元気を与えようと、温泉宿としての質の高さを追求し続ける点にあると言えるだろう。風呂は源泉掛け流しで、四季折々の表情を見せる山や渓谷の眺めを楽しみながらゆっくりとくつろぐことができる。アイガモ農法による無農薬の米や地鶏の卵など、地元の食材をふんだんに使った料理は素材のおいしさを引き立てるように調理され、厳選した器に盛られて提供される。気配りの行き届いた接客にも定評がある。
 質の高いもてなしを実現した背景にあるのは、上口昌徳社長が創業以来掲げる「食べていければよく、利潤をあえて追求しない」という信念だ。「企業の資産や負債を表すバランスシートには記載されませんが、温泉宿を家業とする私たちにとっては、“あの雰囲気にまた浸りたい”とか“あの親切な人にまた会いたい”と思ってもらえるような宿泊客の満足感こそが、何ものにも変えられない資産です。利潤を追い求めるあまり、一番大切な資産を失わないようにしたいのです」(上口社長)

決まり切った献立や既製品は使わない

 では、会計帳簿に記されることのない、顧客満足という利益を得るため、かよう亭ではどのような取り組みをしているのか。
 象徴的とも言えるのが、朝晩の食事に添える漬け物を自家製のぬか床で漬けることだ。上口社長は「ぬか床は古くからの日本の食文化の象徴。家庭からは消えつつあるが、せめて温泉宿では残していきたい」と話し、母親から譲り受けたぬか床で地元産の野菜を漬け込み続けている。決まり切った献立や既製品を用いず、一品一品、手間暇をかけて手作りする姿勢はやがて「日本一の朝食」という評価にもつながった。
 加えて、先程紹介した地元の食材は、医学的な見地からの意見も取り入れて選んだもので、宿泊客の健康にも配慮している。
 また、上口社長は「旅館はその地域の文化を紹介する場」であることを自認している。かよう亭で使われたり、展示されたりしている器を手がけた職人が近くの工房にいることから、そこに宿泊客を案内することもある。中にはそこで50万円分も商品を購入した外国人宿泊客もいたそうで、顧客の満足度を高めるとともに、地域経済の活性化にも一役買っている。
 一方、安らぎを感じさせるロケーションの維持、整備にも心を砕き、美しい自然が侵されないようにと、浴場から見渡せる山林を少しずつ買い取ってきた。
 近年では、ISICOの専門家派遣制度や活性化ファンドなどの支援メニューを利用して、さらなる顧客満足度向上を図っている。
 具体的には、病気になりにくい身体づくりや免疫力アップなど、宿泊客が元気になるようなサービスを検討し、健康に過ごせる滞在の仕方を提案。また、旅行代理店を介さず、直接予約をとる宿泊客が約8割で、ニーズを捉えやすいことから、宿泊客の声を専門家にデータ分析、定量分析してもらい、その結果を旅館の経営に生かしている。
 例えば、国内外の宿泊客から寄せられたリクエストをもとに導入したベッドもそのひとつだ。地元の家具職人に特注したもので、和室にマッチするよう高さを抑えた。また、健康に配慮し、化学塗料や接着剤は使っていない。スプリングの入っていないマットレスを採用するなど、寝心地を追求した。現在、ベッドルームは1室だけだが、今後、もう1室にも導入する予定だ。
 さらに、キュービクル式高圧受電設備を導入。以前は受電設備の電気容量が不足していたため、空調設備が中央管理式になっており、一元的に温度制御した温風・冷風を各部屋へ送っていたが、高圧受電設備を入れたことで、各部屋に空調設備を設置し、細やかに温度設定することが可能となった。

夢にかける思いが成功の原動力に

 ところで、今でこそ人気旅館として名を馳せる「かよう亭」だが、創業からしばらくは閑古鳥が鳴く宿だった。
 そもそも、戦後間もなくこの地で旅館業を始めたのは、材木商を営んでいた上口社長の父親である。父親の建てた旅館は高度経済成長の波に乗って増築を繰り返し、やがて客室数56室、収容人数270人へと大型化していった。
 このとき「経済成長がいつまでも続くはずがない。急成長の後には、激しい落ち込みがある」と考えていたのが上口社長である。昭和48年にオイルショックが起きると、上口社長が抱いていた危機感は確信に変わった。そこで上口社長は父親が海外旅行に出かけている間に繁盛していた旅館を独断で廃業。3年間、構想を練った後、規模や経営効率だけを追求するのではなく、小さくても、温泉宿本来の役割を全うし、質のいいサービスを提供する旅館を誕生させた。
地元家具職人が作ったセミダブルベッド2台を配した客室 写真 いい宿であれば、必ずリピーターになってくれるはずと、わずか500通のあいさつ状を送ったほかは「一切宣伝しない」という方針をとったこともあって、最初の数年の経営は厳しかった。時代に逆行する経営戦略に銀行は愛想を尽かし、資金繰りにも窮した。
 しかし、3~4年後、高橋治や丸谷才一といった情報発信力に優れた文人墨客が訪れ、定宿にするようになると、次第に評判が広まり、5年目以降、徐々に経営は軌道に乗り始めた。
 先見の明があったと言ってしまえばそれまでだが、なぜ無謀とも思えるチャレンジを成功できたのか。その答えは、「夢は夢と 思う人には 夢は夢」という上口社長の詠んだ川柳の中にある。
 夢はしょせん夢と考えてしまえば、決してかなうことはないが、夢を実現できると信じ、行動に移せば夢はかなう。創業から39年、83歳を迎えた今も上口社長の意欲はますます盛んだ。

企業情報

企業名 有限会社 かよう亭  
創業・設立 設立 昭和53年9月
事業内容 旅館業

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備考 情報誌「ISICO」vol.83より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.83


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