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いしかわ次世代産業創造ファンド(次世代ファンド)や国のプロジェクトを活用したり、知的財産権に関する取り組みなどを行い、成果を上げた企業を紹介します。
小松プロセスの主力製品のひとつが、再帰反射性のカラーインクや塗料である。再帰反射とは、ライトで照らすと光が照射方向にはね返ってくること。同社の製品は、微細なガラスビーズと反射材、色素などを混ぜ合わせ、優れた再帰反射性と豊富なカラーバリエーションを実現している。
夜間に抜群の視認性を発揮し、塗料と同じ色で光るという特徴を生かし、開発当初は衣服やバッグなどに使われた。コンクリートや木材、鉄にも塗布できることから、その後、踏み切りにある防護柵やトンネルの防護工など、事故防止や安全確保を目的とした構造物にも使われている。
近年では、思いがけない用途で使われることも増えてきた。例えば、鉄道総合技術研究所では、リニアモーターカーの開発実験に使用された。どれだけ電流を流せば車体が浮上するかを調べるため、レールと車体に相当するものそれぞれに塗料を塗り、レーザー変位計で位置の変化を計測した。また、鉄道の沿線にある橋に塗料を塗り、物体の振動を計測するレーザードップラー計を使って、その揺れ具合を計測した。
鹿島建設ではトンネル工事の際、掘削面の監視にこの塗料を活用している。掘削面の上部に塗料を塗り、レーザー変位計によって変位を計測することで、崩落の予知に役立てるのだ。これにより、塗料を使わず掘削面に直接レーザーを当てる従来の方法に比べ、計測精度が大幅にアップした。開発した技術は鹿島建設、鉄道総研と共同で特許を出願。今後は建設コンサルタントなどに技術を売り込む計画だ。
計測という新たな用途を商機ととらえた松浦宏明社長は、昨年度、開発に取り組む企業や類似技術の動向などを把握し、今後の販路拡大に役立てようと、弁理士の協力を得て、特許マップを作成した。特許マップとは、特許情報を収集・分析し、視覚的に分かりやすく図示したものだ。作成にあたってはISICOの特許マップ作成支援事業を利用した。
「再帰反射」と「計測」をキーワードに調べた結果、大手を含め、多くの企業が技術開発にチャレンジし、多大な関心を寄せている一方、ほとんど実用化されていないことが分かった。また、類似技術として光を反射するテープはあるものの、凸凹のある形状や球体に張るのは難しいことから、インクや塗料の技術的な優位性を確認することができた。松浦社長は「計測分野はマーケットとしては小規模だが、企業や大学に使ってもらえれば、当社の知名度が上がり、取引先や用途がさらに広がる」と期待を寄せる。
現在は特許マップを分析した結果を生かし、再帰反射性塗料のニーズを見込める企業に対して、ISICOの販路開拓に関する支援メニューを活用してアプローチをかけている。今後も企業や大学と共同での開発、特許取得に取り組み、用途開発や販路開拓につなげていく考えだ。
企業名 | 株式会社 小松プロセス |
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創業・設立 | 設立 昭和45年11月 |
事業内容 | 染料顔料等色材の粉砕配合及び微粒子化分散物の製造・販売、再帰反射性カラーインク・塗料の製造販売など |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.83より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.83 |