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兼六園の八重桜から酵母を分離 オール石川産の日本酒が好評 ~合同会社西出酒造

印刷ページ表示 更新日:2015年7月14日更新

目指せ!石川発の人気商品
ヒットのタマゴ 

「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択企業、各種展示会の出展企業の商品等にスポットを当てます。

西出酒造が製造する日本酒「兼六桜」が好評だ。「兼六桜」は石川県酒造組合連合会が石川県工業試験場と連携して取り組む「いしかわ花酵母開発プロジェクト」の一環として開発された。兼六園の八重桜から分離した酵母を使って醸造し、今年2月に販売を開始。観光客らに好評で、昨年末に仕込んだ1,200本を4月に完売した。杜氏である西出裕恒(ひろひさ)代表は、これを契機に新たな酒造りに挑もうと意欲を燃やしている。

甘口に続き辛口も

石川県産の酒米、水、酵母で造った「兼六桜」 写真 「兼六桜」は石川県で独自に開発された酒造好適米「石川門」と白山の伏流水、そして兼六園の八重桜の花びらから分離した酵母といった地元の原料にこだわって醸造されたオール石川産の純米吟醸酒である。
 味わいは甘口で桜をイメージさせるほのかな香りと爽やかな酸味が特徴だ。新たに分離した酵母は一般的な日本酒の醸造に使われる酵母に比べて発酵が穏やかなため、アルコール度数は13度と少し低めである。しかし、その分、普段日本酒を飲み慣れない女性や若者でも気軽に楽しむことができる商品だ。
 西出酒造では昨年11月から仕込みを始め、今年2月からJR金沢駅構内の金沢百番街「あんと」にある地酒のアンテナショップ「金沢地酒蔵」と小松市にある西出酒造の店頭で販売。北陸新幹線で金沢を訪れた観光客らから人気を集めた。
 予定していた本数が完売したことから、同社では今秋、同じ酵母を使って2,400本を生産する計画である。
 さらに、今年4月には第2弾として、第1弾の兼六桜の醸造過程で得られた酵母を使って仕込んだ日本酒を新たに発売した。この酵母を使った場合、アルコール度数が19度と高く、芳醇な香りのする辛口の日本酒に仕上がるのだが、これは「酵母は生き物なので、環境に順応して特性が変わる」(西出代表)ためだ。
 なお、消費者が第1弾の兼六桜と混同する可能性を考え、来年は「甘口」「辛口」の表記を明示した上で2種類を本格的に販売する計画だ。

1,300株から厳選

兼六園の八重桜 写真 兼六桜は、酒どころ石川を発信しようと石川県酒造組合連合会に加盟する酒造メーカー14社が平成25年に立ち上げた「いしかわ花酵母開発プロジェクト」から生まれた日本酒で、ISICOの「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の補助事業を利用し、開発を進めてきた。
 酵母の選定にあたっては、アドバイザーとしてプロジェクトに参画する石川県工業試験場が協力した。兼六園の八重桜から分離した酵母 写真まず奥能登のキリシマツツジや白山の高山植物など、県内の名所や旧跡に咲く花から1,300株の酵母を分離。これを発酵試験などでふるいに掛けて46株に絞った後、香りや味、アルコール発酵力などを吟味して7株を選び、さらに小規模の試験醸造を行うとともに、商品化した際のインパクトを検討した結果、兼六園の八重桜から分離した酵母の使用を決定した。
 西出代表は「今後、当社だけでなく県内の他の酒造メーカーでもこの酵母を使った酒造りに取り組むようになれば、商品ラインアップがさらに拡充し、ブランド力や情報発信力の強化につながる」と期待を寄せる。

天然酵母で他社と差別化

 兼六桜の商品化に向け、西出代表が名乗りを上げたのは、もともと酒蔵の息子ということもあり、天然酵母に興味を持っていたためだ。西出代表によれば、酒造メーカーの多くは、日本醸造協会が培養、販売する酵母を使っているため、安定した品質の日本酒を生産できる一方、日本酒の没個性化が進み、日本酒離れに拍車を掛けているという。
西出裕恒代表 写真 こうした現状を打破したいと考えた西出代表が、他社の商品と差別化を図ろうと利用を決めたのが天然酵母である。兼六桜の醸造に先駆け、平成20年には県工業試験場が開発したリンゴ酸を多く生産する酵母を使った日本酒「心待ち」を商品化。リンゴ酸はワインに多く含まれる成分で、出来上がった日本酒は白ワインのようなすっきりとした飲み口が特徴で評判がいい。
 日本酒の新たな可能性を求めた取り組みはこれにとどまらない。西出代表は今後、いしかわ花酵母開発プロジェクトで最終候補にまで残った白山に自生する高山植物であり、7月から8月にかけてピンク色の花を咲かせるハクサンフウロから分離した酵母を使った酒造りにも取り組みたいと考えるなど、チャレンジ精神旺盛だ。

社名復活させ再出発

 ところで、兼六桜の醸造に取り組んだ平成26年は西出酒造にとっては新たな船出の1年となった。
 大正2年に創業した同社は、「春心(はるごころ)」という純米酒を主力に80年以上にわたって酒造りを続けてきた。しかし、経営状況が悪化したことから、平成8年に経営権を加賀市の企業に譲渡。それ以降は、旅行客らを酒蔵に案内し、その場で商品を直販する観光酒蔵「金紋酒造」として営業を続けてきた。
 売り上げの8割以上はこうした直販によるものだが、観光客頼りになり、売り上げは伸び悩んでいた。そこで、西出代表は昨年、魅力的な日本酒を造って酒店や飲食店への卸売りを増やす方向へ路線変更していきたいと考え、観光誘客に力を入れる前オーナーから経営権を譲り受け、社名も復活させた。
 こうした西出代表の活動の原動力となったのは、中学生だった頃、経営権を手放さざるを得なくなった父裕一さんの「いつかもう一度、一緒に春心を造ろう」という言葉だった。この言葉がいつも頭の片隅にあった西出代表は杜氏を志して大学を中退。鹿野酒造(加賀市)に入社し、「現代の名工」として知られる能登杜氏、農口尚彦さんの下で5年間、修業に励み、平成18年から金紋酒造の杜氏を務めてきた。
石川の地酒と美食の祭典「サケマルシェ」で試飲会を開き、試作品についてアンケート調査した。 写真 裕一さんは2年前に亡くなり、「一緒に春心を造る」という約束は果たされなかった。それでも遺志を受け継ぎ、昨年はついに西出酒造の名で春心の新酒を仕込むことができた。
 西出代表は「長年蔵に棲み着いた酵母を使って伝統的な味を守りながら、天然酵母で日本酒の新たな魅力づくりにチャレンジしたい」と語るなど、やる気をみなぎらせている。
 酒造りは創業以来の蔵の味と天然酵母を使った新たな味を、販路は直販と卸売りを。西出代表はそれぞれを両輪で進めることで、業容を拡大していく考えだ。

企業情報

企業名 合同会社 西出酒造
創業・設立 創業 大正2年
事業内容 日本酒の製造、販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.82より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.82


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