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ISICOでは、企業の成長をサポートするためさまざまな支援制度を用意しています。
制度を利用して事業の拡大に成功した企業の取り組みを紹介します。
冷凍した食品は極端に味が落ちる。そんな固定概念を覆す最新のフリーザーが、「プロトン凍結機」だ。
珍味や魚介類の加工品などさまざまな食品の製造・販売を手がけるホクチンでは、平成19年から出荷を始めた焼き魚、総菜関連部門のてこ入れを行うため、プロトン凍結機の導入による販路拡大を目指した経営革新計画を策定し、平成24年に県から承認を受けた。プロトン凍結機の導入にあたってはISICOの設備貸与制度を利用した。
プロトン凍結機は、磁力、電磁波、冷風を組み合わせ、細胞内にできる氷の粒を小さいまま凍らせるのが特徴だ。通常、冷凍した食品を解凍するとドリップがにじみ出てしまう。これは凝固により大きくなった氷の粒が細胞組織を破壊して生じる液汁で、旨みや風味も一緒に流れ出てしまう。その点、プロトン凍結機は、氷の粒が細胞を壊すことがないため、ドリップはほとんど見られず、凍らせる前と変わらないおいしさを保つことができる。
同社では、サバの照り焼きやサケの塩焼きなどの冷凍にプロトン凍結機を活用し、全国でも珍しい焼き魚の総菜卸として青森から鹿児島まで全国各地のスーパーに出荷。その品質の高さには、納入先からも驚きの声が上がっているそうだ。
同社がプロトン凍結機を導入した背景には、冷却にかかる時間が大幅に短縮できる点も挙げられる。従来の凍結庫は冷凍に30~40分かかっていたが、プロトン凍結機では13分で急速に凍らせることが可能だ。以前は商品が焼き上がっても次工程の冷却に時間がかかり、凍結庫の前に焼き魚を乗せたケースが積み上げられる光景が常態化していた。しかし、導入後はその課題が解消され、スムーズな製造につながっている。
さらに、プロトン凍結機は食品の中心部をマイナス35度の低温までしっかりと冷却できる。このため、配送時に溶け出す心配がなく、菌の増殖を抑えられることから、多くの商品で解凍後の消費期限は3日から4日に延びたという。「さらに日持ちするようになれば、コンビニなどの大手市場も狙える。そのために、真空に近い状態で包装できる深絞り機の導入を検討している」と話すのは山上智之社長。事業開始から7年、焼き魚・総菜関連部門の売り上げは初年度の2倍以上に伸びており、同社では今後も製造の効率化や品質向上の取り組みを推し進め、一層の高みを目指して成長曲線を描いていく計画だ。
企業名 | 株式会社 ホクチン |
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創業・設立 | 創業 昭和41年6月 |
事業内容 | 珍味や一夜干し、ぬか漬け、粕漬け、焼き魚・魚総菜などの製造・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.79より抜粋 |
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掲載号 | vol.79 |