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熱可塑性の炭素繊維を自動で積層

印刷ページ表示 更新日:2014年12月26日更新

トライアングル

県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。

工作・繊維機械のノウハウ生かす

熱可塑性プリプレグ自動積層機 写真 津田駒工業は国内初となる「熱可塑性※1プリプレグ自動積層機」を開発した。プリプレグとは、炭素繊維を一方向に並べて樹脂で固めたシート状の素材で、航空機や自動車の構造材などへの利用が期待されるものである。このプリプレグを材料として活用するため、これまでは用途に合わせて数枚から数十枚を手作業で重ね合わせて板状にしていたが、今回開発した積層機ではこの作業を自動化した。
 積層機はプリプレグを一方向にすき間なく並べたり、さまざまな角度を付けて並べることが可能で、こうした位置制御には、同社がこれまで工作機械で培ってきた技術が生かされている。
 また、同社が繊維機械の製造で積み上げてきたノウハウを駆使し、プリプレグにかかる張力を制御することで、重ね合わせる際にしわなどが発生しないような工夫などを行ってきており、現在は最終設計の段階にある。
 今後はこの積層機を売り込むため、いしかわ次世代産業創造ファンド(次世代ファンド)フォローアップ事業の助成金を活用し、平成27年3月にパリで開催される世界最大級の複合材料関連展示会「JEC」に出展し、お披露目する予定だ。

金沢工大と連携し、超音波溶着を導入

 津田駒工業が大手重工メーカーから依頼を受け、初めて積層機を開発したのは平成20年にさかのぼる。ただし、当時開発したのは熱硬化性※2プリプレグ用の積層機であり、今回は熱硬化性と熱可塑性という性質の違いに悩まされることになった。
 というのも熱硬化性プリプレグは樹脂が半乾きの状態で、積層すれば自然と接着するのに対し、熱可塑性プリプレグは完全に乾いた状態のため、積み重ねただけでは一体化しないのだ。
 この課題を解決するため、同社では金沢工業大学の鵜沢(うざわ)潔教授と連携し、超音波によって溶着させる技術を確立した。溶着に最適な超音波の出力や加圧力を導き出すため、同社では次世代ファンド助成事業を活用しながら何度も実験を繰り返した。十分に溶着されているか、あるいは溶着部の炭素繊維に損傷がないかなど、試験評価は石川県工業試験場次世代技術開発支援室が担当した。
 「熱可塑性炭素繊維は、現在主流の熱硬化性炭素繊維に比べて安価で、量産性にも優れている。技術開発はこれからが本番とはいえ、将来、自動車や家電に使われるようになれば、スピーディーな成型が求められ、そのためには積層の自動化は欠かせない。ここに商機がある」。開発の狙いについてこう話すのはコンポジット機械部の坂井一仁部長だ。
坂井部長 写真 また、積層機で作った材料を使えば、試作品製作が容易になることから、県内のプレス加工会社による炭素繊維事業への参入を後押しすることにもつながる。
 県内では、大学や企業などが連携して炭素繊維製品の一貫生産を目指す「いしかわ炭素繊維クラスター」の取り組みも進んでおり、積層機の完成は、その進展に一層弾みをつけてくれそうだ。

※1. 加熱すると軟化し、冷やすと再び硬化する性質
※2. 加熱すると硬化し、その後元に戻らない性質

企業情報

企業名 津田駒工業 株式会社 
創業・設立 創業 明治42年3月
事業内容 繊維機械、工作用機器の製造、販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.79より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.79


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