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ISICOは11月19日、県地場産業振興センターで「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」を開催し、最優秀起業家賞1人、優秀起業家賞5人を決定した。このコンテストは将来有望な起業家の発掘を目的とした事業で、8回目を迎える今回は、スタートアップ資金補助金の総額を1,000万円に倍増し、支援対象も6人に増やした。当日は過去最多となる県内外の114人の応募者の中から1次・2次審査を突破した10人が、練り上げた事業計画を発表。(株)アイ・オー・データ機器の細野昭雄社長をはじめ起業家や経営コンサルタント、金融機関の融資担当者らが審査し、ISICO理事長の谷本正憲知事が受賞者に表彰状を手渡した。ここでは、受賞者の提案内容を紹介する。
見事、最優秀起業家賞を獲得した金岡久夫さんが提案したのは、世界最小のマイクロタグを活用した事業である。
「OCA」と名付けられたこのマイクロタグは縦0.46ミリ、横0.48ミリ、厚さ0.15ミリという小ささで、情報を記録するIC チップと無線通信用のアンテナを世界で初めて一体化することに成功した。ICチップには512ビットの容量がある。商品などに埋め込んだり、貼り付けたりすれば、履歴管理や真贋(しんがん)判定、盗難防止といった幅広い用途に活用できる。
例えば、OCAをいち早く採用したオーストラリアの会社では、車両情報を書き込んだOCAを塗料に混ぜて車体に吹き付け、車の盗難防止に役立てている。この会社では従来、盗難防止用にマイクロフィルムを貼り付けていたが、これでは情報を確認する際、塗料をはがし、顕微鏡を使う必要があった。OCAならば、アンテナをかざすだけで瞬時に情報を読み込める。
また、OCA入りのピアスを実験用マウスに付ければ、研究履歴の管理や個体の識別が容易になる。また、試験管に取り付ければ、一本一本に入っている試薬の情報を管理することが可能になる。現在は100本の試験管のデータを一度に読み込むためのアンテナを石川県工業試験場と共同で開発中だ。
用途として有望なのが物流会社における荷物の管理だ。従来、荷物の管理に使われているバーコードは、表示位置が限定されていたが、OCAはどこに貼ってあっても読み込みが可能で、より便利になる。金岡さんは「世界市場に向けてチャレンジ精神を忘れることなく、努力したい」と意欲を燃やしている。
南手英克さんは、企業が抱える課題を高校生の力を借りて解決するビジネスプランを披露した。仕組みは次の通りだ。まずは企業や自治体が課題を提示し、これを解決するための企画を募るコンテストを開催。高校生は自由な発想で考え出したアイデアをネットで投稿する。優れたアイデアには企業が企画料を支払うほか、実際に事業化する場合は南手さんが仲介して知的財産権の調整を図る。
企業にとっては、若い感性を生かしたアイデアを得られるほか、コンテストそのものが宣伝になる。高校生にとっても、リアルなビジネス体験が得られ、進路選びにも役立つ。有能な人材を確保したい企業と、自分に合った会社を探したい高校生にとって、マッチングの場にもなる。今春から金沢商業高校で試行が始まっており、既に6件を受注。南手さんは「若者の可能性を広げ、企業も発展するビジネスモデル」と手応えを感じている。
精神障がいのある方に、対人スキルやビジネスマナー、パソコンなどの訓練を実施し、就職を支援する奥山純一さん。平成24年7月の会社設立以降、2年間で23人が就職するなど、高い実績を誇っている。そんな奥山さんが提案したのは、精神障がいのある方が、幸せに長期就労できるようにするための新たな訓練コースの開設だ。
きっかけは精神障がいのある人が、せっかく就職しても、長続きせず辞めてしまう場合があったことである。原因は仕事内容のミスマッチや体力不足、社内の人間関係などさまざまだが、奥山さんは「自分はどんな仕事に興味があるのか」「どんな時に体調を崩すのか」など、もっと自己理解を深められれば、長く働き続けられると分析。新コースでは、企業から受託したさまざまな作業や農作業に実際取り組んでもらうことで、自分自身の関心や適性、体調に関する気づきの機会を増やし、継続的な勤務を後押しする考えだ。
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.79より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.79 |