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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
3次元CADで描いた設計図をもとに、石膏(せっこう)や樹脂で立体を造形する3Dプリンター。今年6月、この話題の新技術の活用策を探る「第1回3Dプリンタクリエイティブコンテスト」(日刊工業新聞社主催)が開かれ、小松鋳型製作所が「光造形・その他部門」の最優秀賞に輝いた。
同社が提案したのは、銅合金、鋳鉄(ちゅうてつ)、ステンレスの3種類のねじれたリングが知恵の輪のようにつながれ、アルミの造形物にかけられた「トリリングモデル」だ。同社では、3Dプリンターでこのモデルを鋳造する型を作り、実際に金属製の構造物を製作した。3Dプリンター事業をけん引する井家 洋(いのいえ ひろし)専務は、「これまでの研究開発の成果」と説明する。
この作品で特筆されるのは、さまざまな金属を使っている点だ。通常、3Dプリンターで使う石膏は、アルミや銅合金などの融点が低い金属の鋳造はできても、加工温度が約1400度の鋳鉄や約1600度のステンレスなど、高融点の金属に対しては耐熱性が不足する。
そこで、同社ではこの課題を解決するため、県工業試験場やISICOのほか、(株)羽田合金(白山市)、高級鋳鋼(株) (白山市)と連携し、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)として研究開発に取り組むことにした。ここでは、県工業試験場機械金属部と共同で、耐熱性に優れた材料を新たに研究。それをベースに型の試作品を製作して実際に鋳造し、耐熱性の確認をするなど、産官それぞれのノウハウを結集して最適な素材を追い求めた。そして、平成21年にセメントを主原料に、鋳鉄の鋳造に耐えられる新素材を開発。平成24年には、型をより硬化させることに成功し、ステンレスでも安定した鋳造が可能になった。
同社が3Dプリンターを使った鋳型開発をスタートしたのは、平成18年のことだ。井家勝八(しょうはち)社長が、次世代を見据え、新たなビジネスとして注目したのがきっかけである。
それから8年、同社の研究開発は、最終段階に近づいている。「3Dプリンターで造形した型は、最終的には壊して鋳造品を取り出す。その際に、複雑な形状をした箇所に型が残りやすいという課題がある」と井家専務。県工業試験場と課題の解決を急いでおり、研究意欲はより一層、高まっている。
同時に、開発後をにらんだ動きも加速している。平成24年にはISICOの中小企業外国出願支援事業の採択を受け、海外の鋳型メーカーの参入を防ぐため、高耐熱性材料に関して中国と韓国で国際特許を出願。また、ISICO主催の県中小企業技術展やホンダ技研工業(株)など県外大手メーカーとの技術提案型商談会にも積極的に参加し、新たな販路の開拓に焦点を合わせている。
企業名 | 有限会社 小松鋳型製作所 |
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創業・設立 | 設立 昭和42年 |
事業内容 | 産業用鋳型の製造 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.78より抜粋 |
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掲載号 | vol.78 |