ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 情報誌ISICO > 樹脂製品の美しさを追求 塗装不要の成形技術を確立

本文

樹脂製品の美しさを追求 塗装不要の成形技術を確立

印刷ページ表示 更新日:2014年12月5日更新

チャンスをつかみ、未来をひらく
Seize a chance and open a bright future.

石川県とISICOは今年7月、本田技研工業(株)との技術提案型展示商談会を栃木県内の同社研究所で開催した。出展した県内企業34社の中でも、多くの来場者から注目を集めたのが、まるで塗装したかのような質感、輝き、色味を樹脂製品で実現した室島精工である。技術に磨きをかけ、樹脂製品の美しさを追求する同社の取り組みに迫った。

国内外の大手メーカーが工場を視察

室島満専務 室島精工が独自に開発し、注目を浴びたのは、「塗装レス射出成形」と呼ばれる技術である。樹脂製品は、質感を向上させるために成形後に塗装を施す場合があるが、この技術では塗装品と見間違えるような質感、輝き、色味を射出成形だけで表現することができる。
 例えば、化粧品やシャンプーの容器には、人体に有害な有機溶剤を含んだ塗装は使えない。そのため、高級感のあるゴールドやシルバーの樹脂容器を作りたくても、従来の技術では茶色やグレーのような色でしか表現できなかった。しかし、同社の技術を活用すれば、とても樹脂とは思えないような鮮やかな発色、つややかな光沢を表現することが可能になる。
 塗装の工程が不要になるので、コストは20~40%も低減し、納期も短縮できる。本田技研工業との商談会の後、まだ具体的な商談は進んでいないが、車の後付け用パーツを作る会社から声が掛かり、情報交換を進めている最中だ。
 技術が製品化されるのはこれからだが、これ以外にも、展示会等で技術を知った国内外の大手メーカーが工場を視察に訪れるなど、注目度は着実に高まっている。

成形時の温度管理が技術の要

塗装したように滑らかでつややかな美しさを実現した樹脂製品のサンプル 同社では4、5年前に車の部品メーカーから依頼を受けて技術開発に成功。以降、徐々に品質向上を図ってきた。画期的な技術だけに、さぞ革新的な工法や材料が用いられているかと言えば、決してそうではない。最先端の加工機械を使っているわけでもなければ、特別な加工プロセスを踏んでいるわけでもなく、樹脂材料もどの企業でも仕入れ可能なありふれたものだ。
 では、どうしてこのような技術が実現したのだろうか。同社の室島満専務は「金型の作り込みと成形時の温度管理が大切」と明かす。
 「射出成形は加工の瞬間が見えない。材料がどう溶けて、どう流れ、どう固まるのか。温度や圧力、スピードを変えながら、なぜ良くなり、なぜ悪くなるかを徹底的に追求した」(室島専務)。
 また、業界では珍しく金型の設計・製造と射出成形を社内で一貫して取り組む点も成功要因の一つだ。金型部門と成形部門がお互いにデータを共有しながら、試作を繰り返すことで、樹脂材料が本来持っている質感や色味を極限まで引き出す塗装レス射出成形にたどり着いたのである。

金型製造エリア金型製造エリアと隣り合う射出成形エリア

ロケット部品などニッチ分野に活路

 塗装レス射出成形のほかにも、表面にシワ模様を施す「シボ直掘加工」、樹脂を厚みのあるガラスの塊のように成形する「厚肉プリズム成形」など、難度の高い技術を有する室島精工だが、樹脂成形に乗り出したのは13年前と、それほど古い話ではない。
 そもそもは昭和48年に鉄工所として創業。しかし、孫請け、ひ孫請けの仕事が多かったことから、室島衞(まもる)社長は「自分で値段を決められるようなメーカーとして自立したい」と考え、昭和55 年に金型製造に転換。さらに、平成13年には最終製品を作りたいとの思いから射出成形機を導入した。どちらもまったくノウハウのない状態から、試行錯誤を重ね、技術を積み上げてきた。
 射出成形では当初、車の内外装の開発に使われる試作品を作ることからスタートした。しかし、設計のデジタル化、部品の共通化が進むと、試作品の開発は10分の1に激減。そのため、現在はニッチ分野の小ロット品に活路を見いだしている。例えば、H2ロケットに搭載される機器のすき間を防ぐシール部品、水中に敷設する光ケーブルの中継器も同社が手がける製品だ。
 このほか、車や家電、日用雑貨といった分野で多品種少量生産のニーズに応え、取引先は200社にも及んでいる。

自社ブランド製品も視野に

 こうした取り組みによって、同社の売り上げに占める射出成形品の割合は20~30%にまで高まってきた。今後は塗装レス射出成形を武器に、さらに売り上げを伸ばすとともに、日用雑貨など自社ブランド製品の製造も視野に入れる。
 とはいえ、樹脂は金属やガラスなどの安価な代替品というイメージが強い。室島専務は、「こうしたイメージを払拭し、これって樹脂製なのかと驚いてもらったり、樹脂っていいよねと見直してもらえるような製品を作りたい」と意気込む。
年に5回、各種展示会に計画的に出展し、技術をアピール そのために現在、同社が取り組んでいるのが工業デザイナーとのコラボレーションによる製品開発である。また、メーカーから一緒に技術開発に取り組もうと声がかかるケースも増えてきた。
 軽くて丈夫で安価。同社はこうした樹脂の特性に、独自技術によって美しさをプラスすることで、樹脂製品の可能性を大きく広げ、躍進に結びつける考えだ。

企業情報

企業名 株式会社 室島精工
創業・設立 設立 昭和48年4月
事業内容 樹脂製品用金型の設計・製造、樹脂製品の射出成形

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 関連URLを開く
備考 情報誌「ISICO」vol.78より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.78


月間アクセスランキングへのリンク

月間アクセスランキング
DGnet 企業情報/バーチャル工業団地/情報誌ISICO


ViVOサイトへのリンク

活性化ファンド・チャレンジ支援ファンド商品開発ストーリー集サイトへのリンク

じわもんセレクトサイトへのリンク

DGnetサイトへのリンク