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3年前に金沢市内でハンバーガーショップ「ワンダフル」を開店し、外食産業に参入したアイエムエムフードサービス。現在では、出店する地域や施設、消費者の多様なニーズに対応し、さまざまな飲食店を展開する。競争の激しい飲食業界にあって、県内に7店舗、東京都内で1店舗と店舗数を拡大させている同社の試みをクローズアップした。
アイエムエムフードサービスは今年5月、金沢駅前のポルテ金沢に「オリーブオイルキッチン」を開店した。その名の通りオリーブオイルを使った地中海料理を提供するレストランで、同社の河村征治社長は「開店以来、予想を超える人数のお客様に来ていただいている」と笑顔を見せる。
同店のほか、ハンバーガーショップ「ワンダフル」、本格ピザとワインが楽しめる「サンカルロ」、焼きたてパンケーキが評判の「ティキガーデン」、パーティーラウンジ「コロンブス」といった具合に、同社が展開する飲食店には一つとして同じコンセプトの店がない。
その理由について河村社長は「当社では立地条件や客層、時代のニーズを考慮して、この場所にあったらいいなと思うような業態をオリジナルで開発しているから」と話す。例えば、先ほど紹介したオリーブオイルキッチンならば、次のようなことが考慮されている。
まず、同店が入居しているポルテ金沢は、ホテル日航金沢の宿泊客、観光客、テナントのオフィスからのビジネス客が多く、男性客を中心に、夜に酒を楽しめる店舗に対する需要があったが洋食店はなかった。そこで目を付けたのが、ディナータイムに男性はもちろん、女性にもヘルシーにビールやワインを楽しんでもらえる地中海料理だ。また、地中海料理によく使われるオリーブオイルは血中の悪玉コレステロールを減らすなど、健康にいい食材として近年注目が高まっている。こうした点を考え合わせ、店のコンセプトを固めていったというわけだ。
肝心の料理はどうか。オリーブオイルキッチンのメニューを見ると、能登豚、地物甘エビ、能登産の生ガキ、金沢港で上がった水ダコなど、石川県産の食材が目に付く。しかし、河村社長は「観光客向けの過剰な地元食材キャンペーンをするつもりはない」と言い切る。
というのも、いくら地元で採れた食材でも、旬が過ぎていれば、味も落ちるし、価格も高い。そこで、同社では国内はもちろん、世界各地からその時々で最もいい素材を仕入れるようにしている。ただし、食材の善し悪しは鮮度で決まるケースも多い。そのため、鮮度が求められる食材については地元産の採用率が上がるというわけだ。
すべての料理を手作りする点もこだわりの一つだ。各店舗でシェフが腕をふるうのに加え、いくつもの店舗で品質に優れた料理を提供するために採用しているのが、「アトリエ」と呼ばれるセントラルキッチンである。アトリエの役割は、各店が共通して使う専門的なパンや生地の製造、燻製など特別な設備を必要とする肉や魚の加工、長時間煮込むソースの仕込みなどである。
例えば、パンを焼くには専用の焼成機や熟練した職人が必要だ。しかし、焼成機を1店1店に配置するとコストもかさむし、貴重なスペースを取られてしまうことにもなる。腕のいい職人をそろえるのも大変だ。
こうした分業体制は、同社が展開する飲食店全店の品質向上と安定化、各店舗における業務の省力化に役立っているだけでなく、スピーディーな店舗展開の下支えとなっている。
平成23年に起業した河村社長が当初目指したのは、ワンダフルのチェーン店化である。しかし、一時は5店舗まで広げたワンダフルも現在は1 店を除いて閉店を余儀なくされた。河村社長は「失敗だった」と振り返り、その最も大きな原因は、地域ごとの細かなニーズに対応できなかったことと分析する。
同時に河村社長は、「一つの業態を多店舗展開するという戦略が、結果的に自らの良さを消してしまった」と話す。というのも河村社長はフランス料理の料理人として腕を磨いた後、食品開発コンサルタントや国内外に70店舗以上を展開する大手レストラン運営会社の副社長を務めた経験を持ち、その間、さまざまな業態の飲食店の企画、立ち上げに携わってきた。
つまり、業態の開発力こそが自らの強みというわけである。そこで、その強みを生かして、出店する地域や施設、消費者のニーズを分析した上で最適な店舗を作り上げる現在のやり方へと戦略を変更した。平成24年に出場したISICO主催の「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」で優秀起業家賞に選ばれ、資金調達などで支援を受けたことも、店舗展開を後押ししてくれたという。
現在では先ほど紹介した自社店舗が好調なほか、東京などから飲食店のプロデュースを依頼されることも増えた。また、インターネット専門の冷凍ピザの販売店「森山ナポリ」も好評だ。職人が一枚一枚手作りしたピザを瞬間冷凍して全国に宅配する仕組みで、約1年前のオープン以降、口コミでじわじわと評判が広がり、全国から注文が寄せられている。
来年春に迫った北陸新幹線の金沢開業について河村社長に聞くと、「お客様が増えると同時に、大都市の資本のライバル店も間違いなく増える」と危機感を募らせる。
競合店に対抗するため、河村社長は、料理や接客はもちろん、「お客様を知り、そのニーズに合わせたおもてなしが必要」と話す。例えば、会計の際の金額提示もその一つ。県内の飲食店では小さな紙切れで総額だけを提示する店も多いが、首都圏の消費者には明細を提示しなければ不信感を招くという。また、外国人の旅行者向けにメニューを英語で表記することもおもてなしにつながる。
「これからも利用者がおいしい料理を楽しい雰囲気で食べられて、街の活性化に貢献できる飲食店を作っていきたい」と話す河村社長。既存店舗の充実や新規出店にこれからも期待したい。
企業名 | アイエムエムフードサービス 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 平成23年6月 |
事業内容 | 飲食店の経営、飲食店のトータルプロデュースなど |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.76より抜粋 |
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掲載号 | vol.76 |