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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
明石合銅は三相誘導モーターに搭載されるローター(回転子)を純銅で製造する技術を確立した。三相誘導モーターは工作機械、ポンプなどに組み込まれるごく一般的なモーターである。ローターは通常、アルミ製だが、より電気伝導率に優れた純銅で製造することでモーターの効率が2~3%アップする。製造にあたっては、金型に溶融した金属を高圧で注入し、成形するダイカスト製法を用い、量産を可能とした。開発の指揮を執った明石隆史常務は「純銅ローターのダイカストによる量産は日本初」と胸を張る。
開発は平成22年からスタートし、平成23年度にISICOの「いしかわ次世代産業創造ファンド事業」に採択された。技術の確立に向け、大きな課題となったのは、金型寿命が短くなることだった。純銅の注湯温度は1200℃で、アルミより500℃も高い。熱によって金型が傷むため、アルミ鋳造時の10分の1程度しかもたなかったのだ。課題の解決に向け、当初は金型に使う鋼材や表面処理に工夫を加えたが、金型寿命は思ったほど改善しなかった。そこで、同社では金型を分割式とし、傷んだ部分だけを簡単に取り替えられる仕組みに変更。交換用の金型は安価な鋼材を用いた上、表面処理も施さず、コストを抑えた。
また、溶けた金属は高温になるほどガスを取り込みやすくなり、鋳造後、内部に小さな気泡ができてしまう。これを防ぐため、金属を注入する速度や圧力、金型の形状などを何度も見直し、不良率の少ない最適条件を見いだした。
現在、モーターやポンプ、自動車、工作機械のメーカー10社で試作品の評価が進んでいる。
開発にあたっては、ザクシスヤズ(金沢市)が金型を製造し、金沢工業大学の山部昌教授と瀬戸雅宏講師が金型の変形や応力に関するシミュレーション解析を担当。県工業試験場機械金属部が不良率低減のための鋳造条件の確認を行った。
明石合銅では「AG バイメタル」と呼ばれる鉄と銅合金を接合した独自の高性能複合材料を使って製品を作っているため、銅を扱うノウハウには長けていたが、ダイカストには初挑戦であり、技術の修得には国際銅協会の協力を仰いだ。
明石合銅がこうした技術開発を手がけた背景には、平成27年にモーターに対する日本の効率規制が強化されることが挙げられる。そこで、効率アップの手段として提案するのが純銅ローターというわけだ。また、アルミ製に比べ、トルクや出力に優れるため、モーターの小型化にも役立つ。ただし、価格はアルミ製の十数倍であり、明石寛治社長は「価格を受け入れてもらえる特殊用途向けに営業をかけたい」と販売戦略を描いている。
企業名 | 株式会社 明石合銅 |
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創業・設立 | 設立 昭和29年1月 |
事業内容 | 砂型鋳物部品、バイメタル製油圧機器部品などの製造 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.75より抜粋 |
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掲載号 | vol.75 |