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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
五大開発は、切り土や盛り土の上に建設された道路や斜面が、地震の際、どの程度の被害を受けるのかを精密にシミュレーションする解析エンジンを世界で初めて開発した。
これまでにも、道路や橋が地震で壊れるか否かを調べるソフトはあったが、新開発の解析エンジンでは、斜面の形状や土の特性、地震波といった情報を入力することで、地すべりの様子に加え、斜面や道路の変形具合や崩壊状況を詳しく表現できる。
平成23年から取り組んだ開発は、ISICOの「いしかわ次世代産業創造ファンド事業」に採択された。解析にはこれまで船体などに発生する亀裂の様子をシミュレーションするX-FEM(拡張有限要素法)と呼ばれる数値解析手法を応用した。X-FEM は近年提唱された手法で、開発を担当した同社の新保泰たいき輝研究員は「金属と違って、土は性質が一定でなく、理論を実用化するのが難しかった」と振り返る。精度の検証には、破壊力学の専門家である金沢大学の矢富盟祥(ちかよし)教授に協力を仰いだ。
同社では新規設計時はもちろん、既存の斜面の評価、安全対策後の検証に利用できると見込んでおり、半年以内にこの解析エンジンを搭載したソフトの第一弾を商品化し、全国の建設コンサルタントや土木建設企業、研究機関などに販売する予定だ。
開発のきっかけは、平成19 年の能登半島地震だった。五大開発では崩落した斜面の復旧作業に携わるうち、安全対策の効果を正確に測定できるソフトの必要性を痛感した。能登半島地震以降、建設や土木にかかわる国や業界団体の基準が見直されたこともきっかけの一つで、東日本大震災の発生も開発に拍車をかけた。例えば、以前はとにかく壊れない道路が求められたが、新基準では、大地震の場合に壊れても通行可能で、復旧しやすい道路が求められるようになった。そのためには、地震時の被害状況を予測できるソフトが必要になる。
また、ファンド事業への採択が開発を後押しした。石川通社長は「助成を受けたことで、研究員が開発に集中できる環境が整った。その結果、開発スピードが上がり、開発コストの低減にもつながった」と笑顔を見せる。
同社は建設コンサルタントでありながら、業務に必要なソフトを開発、販売するという全国的にも珍しい会社で、そのノウハウの蓄積が強みとなっている。今後も、新開発した解析エンジンを活用し、河川の堤防に特化したシミュレーションソフトなどを商品化する計画で、地域の安心・安全に貢献していく。
企業名 | 五大開発 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和40年3月 |
事業内容 | 建設コンサルティング、ソフトウェア開発・ITコンサルティング |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.74より抜粋 |
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掲載号 | vol.74 |