本文
「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択企業、各種展示会の出展企業の商品等にスポットを当てます。
輪島塗を手がける「ぬり工房 楽」のオリジナルブランド「KOKEMUSU(こけむす)」は、ごつごつとした岩肌や木肌が苔むしたような美しく独特の表情が特徴だ。当初はほぼ飴色だが、使い続けているうちに、じわじわと緑色が濃さを増す。
現在までに、ぐい呑みなど3種類の酒器を商品化し、大手出版社の通販サイトなどを通じて販売している。酒器にこだわる50代、60代の男性に好評で、「色の変わり具合の違いを楽しみたい」と2つまとめて購入する客もいる。
ごつごつとした造形は、職人歴42年の引持力雄(ひきもちりきお)さんが考案した「練乾漆(ねりかんしつ)」という技法で作られている。これは、麻布を素地に、地の粉(焼いた珪藻土の粉末)、コクソ(木くず)、米のりを混ぜた粘土状の漆で形を作る技法で、さまざまな形を立体的に造形できる。
色合いが変化するのは、溜塗(ためぬ)りという伝統技法によるものである。溜塗りは朱漆を塗った後、透明な朱合漆(しゅあいうるし)を塗って仕上げる技法だ。塗った当初は透明度が低く、黒っぽく見えるが、時間が経つと下層の朱漆が透けて見えるようになる。KOKEMUSUでは緑色の漆の上に、朱合漆を塗ることで、次第に苔むしていくような色の変化を実現した。
ユニークな商品が誕生したきっかけは、「今のライフスタイルに合うカラフルな漆器を作ってほしい」という消費者ニーズだった。伝統的な黒と朱のほか、現在では顔料を混ぜることで、緑や黄、青など多様な色を表現できる。しかし、混ぜ物が増えれば、その分、漆の長所である耐久性が損なわれてしまう。そこで、色を楽しめて、かつ劣化しにくい漆器として考えだしたのがKOKEMUSUだった。
とはいえ、開発は一朝一夕には進まなかった。下層に塗る漆はどんな色がいいのか、あるいは朱合漆にどの割合で黒漆を調合すれば、きれいに色が変化するのか。試行錯誤の末、完成させるまでには約2年を要した。
平成24年度には活性化ファンドに認定され、展示会出展など販促活動を展開。その結果、KOKEMUSUの技術をステッキや万年筆などにも応用したいとの要望が寄せられ、異業種とのコラボレーションも進行している。
麻布を素地にしているので、木製の漆器に比べて湿度の変化に強く、海外でも使用できる。力雄さんをサポートし、販促活動を担当する妻の玉緒さんは「いずれは海外でも販売したい」とビジョンを描いている。
企業名 | 輪島塗 ぬり工房楽 |
---|---|
創業・設立 | 創業 昭和58年 |
事業内容 | 輪島塗の製造、販売 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.74より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.74 |