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県内の企業、団体が行っている話題性のある取り組み、ユニークな活動に注目しました。
加賀染匠が手がけるのは、和装小幅織物の染色加工である。特に浴衣に仕立てられる薄い綿生地の染色を得意としており、現在では売り上げの80%を占めている。
高く評価されているのが「ボカシ」と呼ばれる色の濃淡を出す技法である。同社では、主力としていた合繊織物が減少し、売上減に苦しんでいた約20年前に淡いパステルカラーの浴衣にボカシを施す技術を独自に考案。これが経営を好転させる契機となり、主力を浴衣生地へとシフトした。
さらに同社の成長を後押ししたのは、機械化の取り組みだ。最新の電子制御技術で高品質を実現する自動スクリーン捺染機などを導入し、品質の安定化や量産加工を実現すると同時に、型や工程に工夫を凝らすことで、手捺染に近い繊細な表現を可能にした。
技術が認められ、同社では数々のブランド浴衣の染色も手がけている。今年6月にポーランドを訪問した安倍晋三首相が、日本の食文化を紹介するレセプションに出席した際に着用していた浴衣も、コシノジュンコさんがデザインし、同社が染色したものだ。横綱・白鵬関をはじめ、力士用の浴衣も染めている。
浴衣は約10年前からブームが続くと言われるが、山下芳弘社長は「若者向けのファッションビルなど浴衣の売り場は増えたが、生産のグローバル化によって価格競争も激しくなり、市場は厳しさを増す」と話す。その言葉通り、浴衣を専門にする業者は国内でも数えるほどしかないという。
そんな中、同社が挑戦するのが付加価値を高める新技術の開発だ。その一つが約5年前に開発した浴衣生地の両面捺染である。ポリエステル生地の場合は、転写技術を使えば両面に色、柄を施すことが簡単にできるが、綿や絹などの天然素材にその技術は使えない。そこで、同社では表面の染料が裏面にまで染みないようコーティング処理を施した上で、染め上げる独自技術を確立して、この問題を解決。表面と裏面で同じ柄を違う色で染めるだけでなく、まったく違う色、柄を染めることもできるようになった。山下社長は「薄い浴衣生地で、こうした技術を持っている企業は他にはない」と胸を張り、少しずつだが商品化も進んでいる。
山下社長は今後も独自技術に一層磨きをかける考えで、「将来は自社ブランドの浴衣を作りたい」と夢をふくらませている。
企業名 | 株式会社 加賀染匠 |
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創業・設立 | 設立 昭和48年5月 |
事業内容 | 染色整理業 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.72より抜粋 |
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掲載号 | vol.72 |