スマートフォン市場がにわかに活気づいている。スマートフォンとは、携帯電話・PHSと携帯情報端末(PDA)を融合させた多機能携帯端末のこと。通話やメールなど携帯電話・PHSで使用できた機能に加えて、ウェブサイトの閲覧、各種データの管理、アプリと呼ばれるソフトウェアの追加などを可能とする小型パソコン並みの高機能が魅力だ。急速な市場の拡大は新たなビジネスチャンスとしても注目されており、県内事業者の参入も活発化している。
例えばiPhoneならば94の国・地域(平成21年12月現在)で販売されていることから、地方にある規模の小さな企業でも、世界中のユーザーを相手に商売できるのがアプリ開発ビジネスの大きな魅力となっている。
アイパブリッシングが立ち上げたiPhone向けの漫画ブランド「J-MANGA」も「日本の漫画を海外に配信してみたい」(福島健一郎代表)との思いで開発がスタートした。現在、契約漫画家が新たに書き下ろした20ページほどの短編15作品を収録しており、1 作115円から230円で販売。日本語以外の言語に設定された端末では自動的に英語版が表示されるように工夫されていて、約70%がアメリカを中心とする海外でダウンロードされている。
同社が開発するアプリはほかにも、国立科学博物館の展示品を温かみのある手書きのスケッチと解説文で紹介する「電子博物館」(115 円)などいろいろあるが、約半数は無料のアプリが占める。
開発者にとって無料アプリによる収益源は二つある。一つは、画面に広告を表示させることによる収益で、多くの場合、専門の広告配信企業と連携する。もう一つはアプリを活用して販促活動を展開したい企業等が開発費用を負担するケースであり、同社にも企業や自治体からの問い合わせが徐々に増えているという。
もちろん、例外もあり、同社が独自に開発し、無料で提供する「キャラカメラ」もその一つだ。これは、iPhoneのカメラ機能を使って写した映像に、あたかも実在するかのようにアニメキャラクターを映し出し、会話を楽しめるアプリで、福島代表は「無料アプリを広告塔に自社の技術を広くPRして、企業や自治体からの受注につなげたい」と意気込む。同社では、今年度からiPhoneを活用して観光地を案内するナビゲーションサービスの提供にも力を入れており、キャラカメラも観光分野での応用を見込んでいる。
このようにスマートフォン向けアプリの開発ビジネスが活発化する中、昨年11月には石川県内の開発企業等が集まって「iPhone Developer Club Ishikawa(アイフォーンデベロッパークラブ石川:略称IDC)」が発足した。
IDCには現在15社20人が参加し、月に1度は会議を開き、開発技術やプロモーションの手法などについて情報を交換している。個々の事業者では対応が難しい大型案件の共同受注も目的の一つで、すでに大手自動車メーカーから発注が寄せられた。
IDCの不破守康会長((株)C-GRIP 副社長)は「将来は石川県を世界有数のスマートフォンアプリの産地にしたい。アプリのことなら石川県ですべて解決できるワンストップサービスを提供できるようになれば」と意欲を燃やす。
ここ数年、携帯電話市場は飽和状態と言われてきたが、こうしたスマートフォンの登場によって、2台目を所有するという需要が堅調に伸びている。先行するiPhone以外にも、今後はAndroidやWindows Mobileを搭載した端末が増加する見込みで、スマートフォンユーザーもまだまだ拡大すると予想されている。これらに対応したアプリの開発やスマートフォンを活用した新たなビジネスモデルの創出など、県内企業のビジネスチャンス獲得に期待が膨らむ。
企業名 | アイパブリッシング 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 2011年5月 |
事業内容 | - |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.53より抜粋 |
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掲載号 | vol.53 |