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「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択企業、各種展示会の出展企業の商品等にスポットを当てます。
アライウエビングでは、閉じた時に、つなぎ目が隠れて見えなくなるファスナー「ツインナー」を完成させ、販路拡大に取り組んでいる。
ファスナーは生地に縫い付けられた樹脂製や金属製の歯をスライダーという部品を動かして、かみ合わせたり、外したりすることで開閉する。ツインナーの場合、生地を二重構造に製織し、下の生地にコイルと呼ばれる樹脂製の歯を縫い付けてあるため、ファスナーを閉めると、上の生地が覆いかぶさり、コイル部分が見えなくなる。上の生地には色違いの糸でラインやチェック柄を入れたり、ロゴを織り込むことも可能だ。
これによって、デザイン性が格段に向上するほか、防風、防水にも効果がある。上の生地が丸みを帯びた細長いチューブ状になっているので、スライダーが生地をかむこともない。
平成24年度から「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の補助事業を活用して、試作品の開発、販促活動に取り組んでおり、既にかほく市内の道の駅・高松(里山館・里海館)や同社のネットショップで販売しているほか、東京都内のメーカーが今年発売する通学かばんに採用されている。
開発のスタートは10年前にさかのぼる。「ファスナーを付けるとデザイン性が損なわれる」。きっかけは、ファッションデザイナーがテレビのインタビューで答えたその一言だった。これを聞いた荒井衛社長と長男の新太郎専務は、ファスナーの製造経験はなかったが、すぐさまツインナーの構造を考え、その構造を形にできるよう設備の改良に乗り出した。
幸いしたのは、同社が複雑な形の織物に対応するため、横糸を通す針を二本備えた織機を使っていたことだ。さらに、横糸を通す際に経糸を上下に動かしてすき間を作る綜絖(そうこう)と呼ばれる部品の数を2倍に増やし、ツインナー特有の二重構造を実現した。また、コイルを作る機械やコイルを生地に縫い付けるミシンは、国内で調達できなかったため、インターネットで探した台湾メーカーに足を運び、オーダーメード。平成22年秋にツインナーを完成させた。
現在、同社が製品化したのは、スライダーを下ろしきっても、左右の生地が離れないクローズエンドタイプである。しかし、これではポケットやバッグなどに使い道が限定されるため、今後は生地が左右に離れるオープンエンドタイプを開発し、アパレル用の用途を拡大する計画だ。
荒井専務は「アパレルやバッグのメーカーに加え、手芸店にも販売を持ちかけたい」と話し、販路拡大に一層力を入れる考えだ。
企業名 | 有限会社 アライウエビング |
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創業・設立 | 創業 昭和45年12月 |
事業内容 | 服飾資材、特殊織物の製造 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.71より抜粋 |
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掲載号 | vol.71 |