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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
工作機械の製造を手がける村谷機械製作所は、レーザーの形状を自在に変えられるファイバー集積型半導体レーザー溶接機を開発した。
この溶接機は、半導体素子から射出されたレーザーを光ファイバーに通して照射する仕組みで、この際、複数の光ファイバーを制御して、加工対象物に当たるレーザーの形状を変形させる。
通常、光ファイバーから発せられるレーザーの形状は長さ2mm、幅0.25mm ほどのだ円形を描くが、この仕組みによって、直径0.25mmという小さな円形のレーザーを当てることが可能になったほか、対象物に応じてライン状、リング状などにも変形できる。
厚さ0.1mmほどの薄板や耐熱性が高く溶接が難しい素材を加工する場合、表面に凸凹ができたり、リークと呼ばれる微細な穴が発生したりして、不良品になってしまうケースが多いが、レーザーの形状や接合条件等を工夫することで、きれいに、欠陥なく溶接できる。
開発のきっかけとなったのは、平成22年度から同社が石川県工業試験場や大阪大学、ベローズ久世(津幡町)と協力して取り組んだ経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業である。この事業で、難溶接材を溶接して作る金属ベローズの不良率を低減するために開発したのがこの溶接機だった。
新たに開発した溶接機でベローズを製造した結果、不良率は従来の70%からゼロになり、製造コストも50%以下に削減された。出来上がったベローズは1,000万回以上の伸縮実験に耐えるなど、高い性能を発揮した。
開発したレーザー装置は母材の表面に金属の粉末や線材を膜のように溶融させるクラッディング(肉盛り)といった加工にも使えるので、金属のコーティングや金型の補修にも便利だ。また、近い時期には立体造型への応用も期待される。
同社では今年4月に東京ビッグサイトで開かれた「レーザー加工技術展」にこの溶接機を出品。3日間で200人以上が同社ブースを訪れたほか、既に十数社からサンプル加工の依頼を受けるなど、高い関心が寄せられている。
開発に当たった同社レーザープロジェクトチームの能和(のわ)功チームリーダーは販路拡大に手応えを感じており、「今後はレーザー形状の微小化に挑戦したい」と、一層の品質向上を目指している。
企業名 | 株式会社 村谷機械製作所 |
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創業・設立 | 設立 昭和47年7月 |
事業内容 | 工作機械、産業機械の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.70より抜粋 |
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掲載号 | vol.70 |