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ISICOでは、企業の成長をサポートするためさまざまな支援制度を用意しています。
制度を利用して事業の拡大に成功した企業の取り組みを紹介します。
中川鉄工所の強みは長くて大きな金属部品、しかもインコネルや二相ステンレスといった加工が難しい材料をミクロン単位の精度で切削する技術力にある。例えば同社では、ポンプに使われるシャフトやガスタービン用のリーマシャフトといった部品を手がけており、最長14m、最大重量15tの部品を加工することができる。
こうした長尺・大型部品の加工は、機械があればできるというものではない。素材が細長ければ、その分曲がりやすく、歪みも大きい。その上、加工中は振動が起きやすく、精度の維持が困難になる。こうした難しい条件の中で、ものを言うのが職人の腕である。同社では加工歴20年を超える職人が、これまで培った技術や感性を駆使し、機械だけでは難しい高精度を実現している。
得意な技術を生かして作った部品の一つが、シェールガスの採掘に使われる遠心分離機の回転筒である。油や土砂、水の選別に使われる回転筒は直径50~70cm、長さ2.5mのステンレス製で、毎分3,500回転の速さで回転する。高速回転中もしっかりとバランスを保つため、高い真円度、同心度が要求されるが、同社ではこれを見事にクリアし、平成23年から24年にかけて北米向けに138台を納入した。現在、北米向けの需要は一段落したものの、今後、南米や中国向けなどの受注増加を見込んでいる。
こうした強みをさらに伸ばそうと、同社では昨年9月に県の「ニッチトップ企業等育成事業」の認定を受け、石川県工業試験場、金沢工業大学と連携して技術開発に取り組んでいる。「難削材の中でも、インコネルや二相ステンレスについては業界でも加工標準がまだ確立されていないので、他に先駆けて独自のノウハウを手に入れたい」。同社の中川博社長はそう話し、今後、素材の特性を分析した上で、加工に適した切削用工具の開発を目指すほか、最適の加工条件を探り出す計画だ。
技能の伝承も課題の一つである。同社の仕事は多品種少量の受注生産ばかりでマニュアル化できない上、言葉にしにくいテクニックも多く、職人の勘に頼る部分が多い。今回の事業は、技術を次の世代に伝える足がかりにもなる。
「機械任せでできるような仕事はいずれ海外に流出してしまう。日本で生き残っていくために、難しくて、他の人がやらないような仕事をどんどん取り込んでいきたい」と力強く話す中川社長。難削材を使った長尺・大型部品加工のオンリーワン企業へ。技術者集団の挑戦が続く。
企業名 | 株式会社 中川鉄工所 |
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創業・設立 | 創業 大正9年1月 |
事業内容 | 金属部品の精密機械加工、組み立て |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.70より抜粋 |
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掲載号 | vol.70 |