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「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択企業、各種展示会の出展企業の商品等にスポットを当てます。
七尾、珠洲両市の企業17社で組織する能登珪藻土研究会は、金沢美術工芸大学と連携してピザ窯を商品化するなど、能登産珪藻土の新たな用途開発に取り組んでいる。
「Dogama(ドガーマ)K2」と名付けられたピザ窯は珪藻土製のレンガを組み合わせて作られており、ガスあるいは炭火で加熱する。珪藻土は断熱性に優れているため、一般的な石窯よりも早く、約30分で窯内部の温度をピザの調理に適した400℃以上に温められる。ピザ1枚が2分ほどで、外はパリっと中はもっちりとした食感に焼き上がる。珪藻土の遠赤外線効果によって素早く中まで火を通すので、素材の旨味も逃さない。
窯の内部が高温になっても、表面は素手で触れることができる。大きさは幅69.6cm、高さ43.5cm、奥行き68.2cmとコンパクトで設置はとても簡単。72kgと軽く、キャスター付きのワゴンに乗せて移動させることもできる。そのため、カウンターに設置したり、客席の近くに窯を運んでピザを提供することも可能だ。
石窯に負けない焼き上がりはプロの料理人から好評で、平成24年10月の発売以降、洋食レストランなどに5台を販売したほか、今も8台の予約が入っている。価格は388,500円。開発に当たっては、「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の支援を受けた。
能登珪藻土研究会の発足は平成21年4月にさかのぼる。珪藻土はこれまで主にコンロやレンガの材料として使われてきたが、ニーズは先細る一方で、今のライフスタイルに合った商品を開発しようと、珪藻土製品を手がける企業がスクラムを組んだ。
研究会ではその年の夏、新商品開発の糸口を見つけるため金沢美大に協力を仰ぎ、学生からアイデアを募る「コンロコンテスト」を開催。20数点の応募作の中からグランプリに輝いたのがピザ窯だった。「肉や魚ならともかく、まさか珪藻土でピザを焼こうとは思いもしなかった」。当時をそう振り返るのは木地一夫代表である。
その後、グランプリを受賞したデザイン画を基に金沢美大と意見交換しながら試作を進め、実際にピザ生地で焼け具合を確認した。当初、熱源には炭火を使っていたが、試作窯では熱がまんべんなく行き渡らず、炭火から遠いピザの中心部がうまく焼けなかった。この問題を解決するために考案したのが天井部のくぼみである。これによって窯の内部に熱の対流が発生し、温度が安定しやすく、ピザが均一に焼けるようになった。
平成23年12月にはガスを使えるように改良した。きっかけとなったのは横浜で開かれたパスタ産業展に出展した際、ピザ職人から寄せられた要望だった。窯の内部構造を変更することで従来よりも内部の温度が高温状態で安定し、焼きムラなく短時間で焼けるようになったほか、連続して焼いても内部の温度が下がらないようになった。
平成24年2月には、七尾市和倉町のレストラン「エピス」にモニター店としてピザ窯を導入。小山康成シェフに使ってもらいながら使い勝手の向上を図った。
研究会ではこのほか、切り出した珪藻土の塊を削って成型する軽量、小型のピザ窯を開発中である。
また、金沢美大と連携して珪藻土を活用した「生活雑貨コンテスト」を開催。学生のアイデアを基に、香炉など新商品の開発も進めている。
「珪藻土の特徴を生かし、業務用だけでなく、販売量を見込める一般消費者向けの商品を作り、会員企業の仕事を増やしていきたい」と力を込める木地代表。北陸新幹線金沢開業の1年前をめどに、アイテム数を拡充しようと商品開発に拍車をかける。
企業名 | 能登珪藻土研究会 |
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創業・設立 | 設立 平成21年4月 |
事業内容 | 珪藻土関連企業の伝統の知恵と技術を結集し、能登珪藻土を活用した製品を開発、発信 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.70より抜粋 |
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掲載号 | vol.70 |