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石川県内の中小企業で、航空機産業への参入を目指す動きが本格化している。航空機産業は、将来大きな成長が見込まれる魅力的な市場だが、高度な技術や厳格な品質管理を求められるなど、参入へのハードルも高い。こうしたハードルを乗り越えるため、ISICOでは、単独ではなく中小企業が一つのチームとなって新規受注を狙う取り組みを支援している。今回の特集では、航空機産業に照準を合わせた挑戦についてクローズアップする。
ところで、航空機産業への参入を目指す動きが活発化する理由とは何だろうか。
一つは、航空機部品の裾野の広さだろう。航空機で使われる部品点数は約300万点と、自動車の部品点数の約100倍であり、さまざまな技術や設備が必要とされる。それだけに独自の技術力を持った中小企業ならば商機を見いだすことも可能というわけだ。
加えて、新興国市場での旅客・貨物量の増大などを背景に、航空機の需要は世界的に増加傾向にある。日本航空機開発協会によれば、世界の航空機の機体数は平成22年の約1万8千機から20年後には約3万8千機に増える見込みである。中でも、座席数120~169席の中型機のニーズが大きく伸びる見込みで、今回のプロジェクトもここにターゲットを絞っている。
また、企業にとっては、新たな事業の柱となるだけでなく、技術的な波及効果を見込めることもメリットだ。航空機産業では、最先端の技術と極めて高い品質管理が要求されるため、技術の開発や高度化が促進され、その成果が自社の他の事業領域にも波及する。航空機部品の納入実績は、対外的にも確かな技術力の証となる。
航空機産業への参入ハードルの一つは、厳しい認証システムの取得だが、ISICOは専門家派遣制度で中小企業をバックアップしている。この制度を活用して、これまで5社が航空宇宙分野の品質マネジメントシステム「JISQ9100」を取得。今年度中には新たに5社がこの認証を取得する見込みだ。また、熱処理やめっきなどの表面処理、非破壊検査といった特殊工程を担当する企業は、国際規格「Nadcap」の取得に向けて活動を続けている。
プロジェクトでは、来年2月のシンガポール国際航空宇宙展に、参加企業による製品ユニットを出品する予定で、来年度中には国内向けの航空機部品の供給を開始し、再来年以降、この実績を足がかりに海外メーカーからの受注を取り込む計画だ。
ISICOでは今後、県内企業に加えて、航空機装備品メーカーと取引実績のある関西や関東の中小企業群、商社などとも連携し、安定的な受注体制の構築を支援する。
難しい道にあえて挑戦
松本機械工業(株)
代表取締役社長
松本 要氏
工作機械に取り付けて、加工物を固定し、位置決めまたは連続加工するためのロータリーテーブルを製造・販売しています。航空機部品を加工する工作機械用に、すでに3種類のロータリーテーブルを試作し、「パリ・エアショー」でも何件か引き合いがあり、手応えを感じました。8月後半から営業活動を本格化させます。
高剛性と高速応答性の両立が求められ、技術的にも難しいのですが、そこにあえて挑戦するのが当社のモットーです。今回のプロジェクトを通して、実際に機械加工を手がける企業に製品を利用してもらい、そこで得られた情報を今後の開発に生かしたいと考えています。
企業名 | 松本機械工業 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和23年6月 |
事業内容 | 工作周辺機器の製造販売 他 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.59より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.59 |