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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
きらびやかな衣装に身を包み、豪華な道具類に囲まれて穏やかにほほ笑むお雛様。人形販売の老舗「人形の堀川」では、手描き加賀友禅を使った衣装、輪島塗や金箔、九谷焼を使った衝立屏風(ついたてびょうぶ)、加賀水引で作った桜・橘など、石川県が誇る伝統工芸の技の数々を盛り込んだ雛人形「加賀三彩」の売れ行きが好調だ。「加賀友禅の生地は柄が最も美しく見えるよう、既成品や型染めの反物を使わず、作家にオーダーして手描きしている。
人形の大きさに合わせて一枚ずつ生地を染めるため、袖(そで)や裾(すそ)など目立つところに模様がきれいに出る」と発案者の堀川善次専務は胸を張る。
加賀三彩のベースとなったのは、平成21年に開発した手描き加賀友禅の雛人形で、23年度に「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定を受けて飾りや道具類にも伝統工芸を取り入れ、発展させた。伝統工芸王国石川のブランド力を強く打ち出した商品は、展示会やウェブサイトなどを通じて知った首都圏の消費者やバイヤーからも問い合わせが相次いでいる。
近年、雛人形購入の決定権が子どもの祖父母から親へ移りつつあることを肌で感じた堀川専務は、「若い世代を取り込む工夫が必要」との考えからさまざまなアイデアを投入した。子どもの誕生月に合わせて2月は梅、3月は桜といった「誕生花」を衣装に描くサービスはその一つだ。また、祖父母と親が一緒に店舗へ出向くことが難しいケースを想定し、ウェブサイトで商品の詳細を見比べることができるように工夫した。人形や道具を単体で選んで自由に組み合わせられる販売方法も、オリジナリティーを重視する親世代には好評だという。少子化で業界全体の低迷が懸念される中、加賀三彩は昨年のおよそ2倍以上の売り上げを見込んでいる。
当初は加賀友禅をはじめ、伝統工芸作家らに知り合いなどまったくいなかったという堀川専務だったが、県デザインセンターに紹介を頼むなど、持ち前のバイタリティーで一から人脈を築き上げた。「海外に住む日本人からも問い合わせがある。探せばいくらでもチャンスはあり、ものにできるかどうかは行動力次第」(堀川専務)。今後は海外への展開も視野に入れ、販路を模索中だ。
企業名 | 株式会社 堀川商店 |
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創業・設立 | 設立 昭和25年8月 |
事業内容 | 人形、ベビー・マタニティ用品等の販売 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.68より抜粋 |
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掲載号 | vol.68 |