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アジア諸国をはじめとする新興国の経済成長を企業の発展に生かす。そんな思いで、グローバル化を目指す中小企業の動きが活発化している。国内にとどまっていては先が見えないと、海外に熱い視線を向ける二つの取り組みにスポットを当てた。
「石川県の伝統工芸を愛でる会」は平成23年度の「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の海外展開支援枠に採択され、アジアへの販路開拓に挑戦している。
同会は伝統工芸の新たな担い手を育成する北陸先端科学技術大学院大学の「伝統工芸イノベータ養成ユニット事業」を卒業し、山中漆器や輪島塗、加賀友禅、九谷焼のほか、電子機器や繊維製品などを手がける11人で構成している。
昨年3月と8月には中国・上海で開かれたギフトショーに出展し、各メンバーの製品を現地の小売店や商社のバイヤーに売り込んだ。「上海は消費者の購買力が高く、市場として魅力的。継続的に出展して販売ネットワークを作りたい」。そう話すのは同会海外担当の砂崎友宏さんである。既に上海の和趣生活館、蘇州のイズミヤなどと取引が始まり、滑り出しは上々だ。
また、ギフトショー終了後も通訳を務めた中国人女性が営業を担当し、同会のブースを訪れたバイヤーら見込み客との商談を継続している。営業活動に役立ててもらおうと、昨秋にはその女性を石川県へ招き、伝統工芸の歴史や作り方などについて学んでもらった。
同会の活動の特徴は石川の伝統工芸をトータルで発信する点にある。砂崎さんが常務を務める朝日電機製作所(白山市)が開発した九谷焼のUSBメモリや蒔絵を施したスマートフォンカバーも注目度の高い商品だ。多様な商品が並べば、足を止めるバイヤーもそれだけ多くなる。出展時には石川県の観光ポスターやパンフレットも持参し、伝統工芸を育んできた風土そのものを合わせてアピールする。
同会では今年3月にも上海のギフトショーに出展を予定するほか、朝日電機製作所の拠点があるシンガポールや香港でも販路拡大に取り組む。一方で、同会メンバーの商品を「和 nagomi」の名前で統一ブランドとして展開し、情報発信力、認知度の向上に役立てる計画だ。
「ゆくゆくは石川の伝統工芸を集めた店を海外で出したい」。砂崎さんの夢は大きく膨らむ。
企業名 | 石川県の伝統工芸を愛でる会 |
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創業・設立 | 設立 平成22年2月 |
事業内容 | 伝統工芸を生かした新商品開発、海外や国内の販路開拓 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.68より抜粋 |
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掲載号 | vol.68 |