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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
ふんわりなめらかなバターの食感に、さわやかなりんごの甘みと酸味が広がる。ビストロ・ウールーが、創業当時から提供している「朝食りんごバター」は、「家族が笑顔で朝食のテーブルを囲む姿をイメージした」と話すオーナーシェフの久田康博さんの言葉通り、パンにたっぷり塗ってほお張れば、朝から幸せな気分で満たされそうな味わいだ。
作り方はいたってシンプル。国産のリンゴと無塩バターに砂糖、はちみつなどの甘味を加え、鍋でひたすら煮込む。わずかながら焼き色がついてしまうためオーブンは使わず、久田さんは鍋につきっきりだ。リンゴがトロトロに溶けたらミキサーにかけてすりつぶす。元々は久田さんが修行していた大阪のレストランで出されていたもので、独立後、自らの手で試行錯誤の末に改良を加え、オリジナルの「朝食りんごバター」を作り出した。当初は店内で食事する際にパンに添えて提供していたが、「自宅でも食べたい」という来店客の声が多く寄せられ、販売を始めた。
プレーン、シナモン、キャラメルの3種あり、今年秋からは県産のブランドリンゴ「秋星」を使った期間限定の新商品、その名も「秋星」を販売している。「秋星」の酸味を生かすため砂糖を控え、はちみつだけで素材の味を引き出した。県農林総合研究センターの協力を得て試作を重ね、「おいしいのはもちろん、“秋星”らしさが残っている」とリンゴ農家からも好評を得た。
今年11月には、香林坊大和(金沢市)で開催された「石川のこだわり商品フェア」に出店し、「秋星」のりんごバターが首都圏のバイヤーの注目を集めた。関西のデパートからは早くもオファーが来ているといい、久田さんは「認知度アップに抜群の効果を得た」と満足げだ。今後は「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」を活用し、インターネット販売の強化や地元ベーカリーショップとのりんごバターを使ったパンの共同開発、カフェなど飲食店への卸売りなど、さまざまなアイデアを温めている。一方で「リンゴの皮むきからすべて手作業なので、1日に作れるのは120個が限界。大量に注文が来ても対応できないのが悩み」と課題もある。
家庭的な温かさで地域の人に親しまれているビストロの味が、全国の家庭の食卓で笑顔をもたらす日を目指して、久田さんの挑戦は続く。
企業名 | ビストロウールー |
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創業・設立 | 設立 平成14年12月 |
事業内容 | ビストロの経営 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.67より抜粋 |
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掲載号 | vol.67 |