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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
小山箸店が力を入れているのは漆塗りの箸のオーダーメードである。太さは1mm単位、長さは1cm単位で指定できるほか、形状は8角形、5角形、4角形など、先端はとがったもののほか、8角形や4角形などから選べる。材質は黒檀(こくたん)、鉄木(てつぼく)、能登ヒバなどで、蒔絵(まきえ)や沈金(ちんきん)を施すことも可能だ。
「服や靴は自分の体に合ったサイズを探して着るのに、箸は長さや太さが大体決まっていて、これに自分の手を合わせて使っている」。同店の小山雅樹代表はこう指摘し、「毎日のように使う箸だからこそ、手にしっかりとフィットして、使いやすいものをオーダーメードしてほしい」と力を込める。
後で変形しないよう木材を十分に乾燥させ、仕上げの漆を7回も塗り重ねるなど、仕事ぶりは実に丁寧だ。世界に一膳の箸とはいえ、木地作りから上塗りまでを一貫生産し、問屋を介さず直接流通させることで3,990円からと手ごろな価格を実現した。
輪島市内にある自社工房での販売に加え、平成22年に東京ビッグサイトで開催されたギフトショーへの出展を足がかりに、昨年9月から西武渋谷店で展示販売がスタート。購入者の口コミによって、「手になじんで扱いやすい」との評判がじわじわと広がり、注文数は徐々に増え、今後は西武池袋本店、そごう横浜店での販売も決まっている。
小山代表が箸のオーダーメードに取り組み始めたのは、両親の体が不自由になったことがきっかけだった。両親のために持ちやすい箸を作ろうと試行錯誤するうち、箸が使いにくくなるのは年を取ると手の把持(はじ)力※が低下するためであり、その人の手に合った箸を使えば、把持力が衰えても箸をうまく扱えることに気づいた。「体が不自由な人が使いやすい箸は、健常者にとっても使いやすい。それならば、一人でも多くの人に自分にぴったりの箸を使ってもらいたい」(小山代表)と事業化に乗り出し、オーダーメード箸の専門ブランドとして「手ばしや」を立ち上げた。
平成23年度には「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」に採択され、補助金を活用して展示会に出展したほか、現在、オーダーメードの箸に込めた思いをつづった冊子を作成中だ。また、県工業試験場で試験を行い、業務用の洗剤、洗浄機で1,000回洗っても劣化しないとのお墨付きを得た。
大量生産・大量廃棄の時代からいいものを長く大切に使う時代へ。同店では箸の修理も受け付けており、小山代表の考え方には今後、多くの消費者から共感が寄せられそうだ。
※握ったものを離さないようにこらえる力
企業名 | 小山箸店 |
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創業・設立 | 創業 昭和21年8月 |
事業内容 | 塗り箸の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.66より抜粋 |
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掲載号 | vol.66 |