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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
久世酒造店が製造、販売する「ぬり漬の素」の売れ行きが好調だ。これは、大吟醸酒を搾った際に出る酒粕や長期間熟成させた酒粕など5種類の酒粕に、珠洲産の天然塩を加えて作った一夜漬けの素で、昨年3月の発売以降、カジマートや東京ストア、アルビス、Aコープなど、県内のスーパーに販路を拡大し、右肩上がりに売り上げを伸ばしている。
使い方はその名の通り、食材に塗って漬け込むだけである。ビニール袋に一口大に切った野菜とぬり漬の素を入れ、軽くもんで冷蔵庫に一晩入れておけば、ほんのりと酒粕の香る漬物ができあがる。肉や魚の味付けにも便利で、薄く塗って、冷蔵庫で1.2日寝かせて焼くと、コクのある味わいが楽しめる。
ぬり漬の素はもともと、創業から226年を数える久世酒造店の女将に代々受け継がれてきた味で、蔵人のまかない食に利用されてきた。日本酒の購入者に無料で分けていたが、「もっとたくさんほしいので売ってほしい」との要望が寄せられるようになり、商品化を決めた。市販に当たっては、手を汚さずに使えるようチューブタイプの容器を採用した。リピーターが増えた現在では、容量の多いパックタイプも取りそろえている。
なじみのない商品だけに、販売促進に向けて力を入れているのが、スーパーの店頭での試食会だ。成果は上々で、「試食すると気に入って買ってくれる人が多い」と久世一嘉社長は笑顔を見せる。一度購入した人がリピーターになったり、口コミで評判を広げてくれるケースも多い。試食会は土日ごとに開催しており、材料費や人件費には「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の助成制度を活用している。
一方でFacebookに「ぬり漬レシピ研究会」と名付けたページを設け、おすすめの使い方を掲載したり、購入者からオリジナルレシピを募集するなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービスを活用した情報発信にも取り組み始めた。ゆくゆくはレシピコンテストの開催も視野に入れる。
ぬり漬の素の発売以降、「こんなにおいしいものを作る会社なら、酒もうまいはず」と日本酒を買いに来る人も増えた。自社の田んぼで独自の酒米を作ったり、硬水と軟水を工程ごとに使い分けたりと、こだわりの酒造りには定評がある。久世社長は「ぬり漬の素が当社の日本酒を知ってもらうきっかけになれば」と期待を寄せている。
企業名 | 株式会社 久世酒造店 |
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創業・設立 | 創業 天明6年(1786年) |
事業内容 | 日本酒の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.65より抜粋 |
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掲載号 | vol.65 |