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新規開業者の15%前後※は女性が占めている。石川県内でも自身の創意工夫と努力で会社を興し、事業を発展させようと奮闘を続けている女性経営者は少なくない。
そこで、今回の特集ではISICO が主催する「革新的ベンチャービジネスプランコンテスト」で過去に入賞実績を持つ二人の女性起業家に注目した。
※日本政策金融公庫総合研究所調べ
中巳出理(なかみでり)代表が率いるAnteは設立以来、デザイナーやコピーライター、システム開発者らと連携して商品企画に取り組み、次々とヒット商品を生み出している。
その代表が、平成21年に発売した「柚子乙女」だ。これは金沢市湯涌の天然水とユズを使ったサイダーで、その後も珠洲市に伝わる揚げ浜式製塩法で作った天然塩を用いた「しおサイダー」、加賀棒茶を使った「加賀棒茶サイダー」を商品化し、合計約130万を販売している。
平成22年にはしおサイダーの姉妹品として「しおゼリー」を発売。イルカやペンギンなど、9種類の海の生き物の絵柄が浮かぶ涼しげなゼリーは、東京スカイツリーの足元にあるすみだ水族館や京都水族館で販売され、それぞれ1,000を超えるお土産品の中でもベストテンに入る人気を集めているという。
今年10月には、白山市剣崎町の伝統的な唐辛子「剣崎なんば」を使ったチョコレート「ちょこっとなんば」を発売する。剣崎なんばは、強い辛味とほのかに感じる甘みとコクが特徴だ。ちょこっとなんばは、厳選したカカオ豆を原料とした高級チョコレートに細かく砕いた剣崎なんばを練り込んでおり、甘みと辛みが絶妙にマッチした個性的な味わいに仕上がっている。中巳出代表は、「夏に人気のサイダーとゼリーに続き、冬場に売れる商品にしたい」と期待を込める。
町おこしにも一役。売り上げの一部を寄付
Anteの商品開発の特徴の一つは、「マーケットイン」の発想だ。これは素材ありきではなく、消費者のニーズをくみ取って商品開発を行う考え方で、ご当地サイダーブームをヒントに企画した柚子乙女などはその好例と言えるだろう。
もう一つのキーワードは「意外性」である。中巳出代表が「たくさんの商品の中から消費者に選んでもらうには意外性が大事」と話す通り、塩とサイダー、チョコと唐辛子は思わず手に取りたくなる異色の組み合わせだ。
忘れてならないのは、地域活性化に貢献したいという思いである。例えば、しおサイダーの売り上げの一部は、能登の里山里海が世界農業遺産に選ばれた根拠の一つでもある揚げ浜式製塩法の継承に役立ててもらおうと「珠洲市里山里海応援基金」に寄付している。ちょこっとなんばも同様だ。商品に使われている剣崎なんばは明治時代以前から作られる伝統野菜である。一時栽培が途絶えたことから「幻の唐辛子」とも呼ばれていたが、平成に入って復活し、収穫量も増えてきた。今回の商品化には、こうした取り組みを応援する気持ちが込められているのだ。
これらの点を絶えず頭に置きながら、新商品のアイデアを練る中巳出代表。「常にヒットを打ち続けるイチローのような企業を目指したい」と腕まくりする。
企業名 | 株式会社 Ante |
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創業・設立 | 設立 平成21年5月 |
事業内容 | プランニング事業、デザイン企画、観光活性化事業など |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.65より抜粋 |
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掲載号 | vol.65 |