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料理店や茶屋を経営する見城亭(けんじょうてい)は、ひがし茶屋街に軒を連ねる「懐華樓(かいかろう)」で披露宴を開くブライダル事業を展開している。芸妓が踊りや太鼓を披露し、伝統料理を味わう宴は、まさに金沢の魅力を凝縮したひととき。そして、茶屋と婚礼を組み合わせた全国的にも珍しい新ビジネスに乗り出した背景には、金沢の茶屋文化をより多くの人に知ってもらい、後世まで守り伝えていきたいという同社の思いが秘められている。
ひがし茶屋街の中ほどに建つ懐華樓は約190年前に建てられた、茶屋としては金沢で一番大きな建物である。一時は住宅として使われていたが、見城亭が買い取って平成5年に再オープンさせた。
夜は常連客や、その常連客からの紹介がなければ利用できない「一見さんお断り」の茶屋として、華やかなお座敷が繰り広げられ、昼間は観光客に内部を公開し、茶屋文化の一端を紹介している。
この懐華樓を活用して見城亭がブライダル事業に取り組み始めたのは一昨年のことだ。大々的なPRは行っていないが、列席者らの口コミで評判が広がり、これまでに10組のカップルが利用した。
懐華樓の婚礼は、花街の営業時間帯に合わせて夕方から行われる。まず、ひがし茶屋街の近くにある宇多須(うたす)神社で厳かに式を挙げる。その後、新郎新婦はちょうちんの明かりを先頭に、神社から懐華樓まで紅殻格子が続く風情あふれる街並みを練り歩く。観光客からの祝福も一生の思い出だ。
披露宴は約40名を収容する懐華樓2階の広間で行われ、新郎新婦による鏡開きで幕を開ける。料理は日本料理マイスターの称号を持つ同社の総料理長が腕を振るった加賀料理だ。金沢の婚礼に欠かせない「鯛の唐蒸し」などが九谷焼や輪島塗の器で提供される。もちろん、茶屋らしく艶やかな芸妓が踊りやお座敷太鼓を披露。新郎新婦や招待客もお座敷遊びを体験できる。
「客単価はホテルや結婚式場に比べて少し高いが、茶屋という非日常的な世界で金沢の文化を満喫できるウェディングは、大勢のお客様に満足いただいている」。見城亭の馬場康行社長はそう言って笑顔を見せる。
企業名 | 株式会社 見城亭 |
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創業・設立 | 創業 大正2年 |
事業内容 | 料理店、茶屋の経営 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.64より抜粋 |
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掲載号 | vol.64 |