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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
マルゼン岩田商店が開発した九谷焼のコーヒーミルク用ホルダー「ミルチュウ」は平成22年の発売以降、1万個以上を売り上げるヒット商品となっている。
使い方は次の通りだ。まず、コーヒーミルクのポーション(小型カップ)をミルチュウにそのまま入れる。このとき、ポーションを指で押し込むと、ミルチュウの内側にある3カ所のツメにポーションの縁が引っかかり、固定される。あとは、ポーションのふたを開け、ミルクをコーヒーに注ぐだけだ。
「使い終わった後のポーションはひっくり返ったりして置き場所に困る」。開発のヒントとなったのは、岩田克久代表の感じたそんな不便だった。ミルチュウを使えば、ポーションに残ったミルクでテーブルや皿を汚すこともない。そして何より、「来客をもてなす際、市販のポーションをそのまま出したのでは味気ないが、ミルチュウを使えばワンランク上のおもてなしを演出できる」と岩田代表は笑顔を見せる。
ラインアップは九谷焼の伝統技法の一つで、青い顔料で細かな粒を描く「青粒(あおちぶ)」をはじめ、象やハートなど、現代的な愛らしい絵柄など70種類(525~1575円)。どれも能美市内の九谷焼職人が手作業で絵付けしたものばかりだ。
試作や販促に当たっては「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファン
ド)」の助成制度を役立てた。
試作では九谷焼窯元の東木製陶所(小松市)の協力を得て、ミルクを注いだ際、裏漏れしないように先端の形状を工夫したほか、微妙に大きさの違う主要ミルクメーカーのポーションを固定できるようにサイズやツメの位置に知恵を絞った。こうした成果は現在、特許出願中である。
また、販路を開拓するために、専用ケースやパンフレット、陳列棚などを準備。ギフトショーに何度も出展するうち、次第にバイヤーの注目を集めるようになり、今ではコーヒー大手のUCC(神戸市)が展開する直営店のほか、雑貨店など全国100店舗以上で販売している。
従来、縁のなかった企業と取引が始まる一方、これまでにない用途の商品だけに、使い方を分かってもらえずに商機を逃すケースもあった。岩田代表は「さらに売り上げを伸ばしていくには認知度アップが不可欠」と話し、雑誌の広告掲載など、メディアへの露出を増やしていく考えだ。
企業名 | マルゼン岩田商店 |
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創業・設立 | 設立 昭和52年10月 |
事業内容 | 九谷焼の製造、卸販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.64より抜粋 |
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掲載号 | vol.64 |