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ISICOは2月17日、金沢都ホテルで「地域伝統発酵食品に学ぶ先進的発酵システム構築と新規高機能食品開発」の成果報告会を開催し、新たに発見した機能性に優れた乳酸菌やその乳酸菌を使って開発した食品などを紹介した。当日は関係者ら約200人が出席し、3年間に及ぶ研究の成果を確認した。
この研究開発は産学官が連携して、いしる(いしり)やかぶらずしなど、石川県の伝統的な発酵食品に含まれる乳酸菌の有用性を調べ、その乳酸菌を活用した機能性食品を開発したり、新たな発酵技術の確立を目指す取り組みである。
ISICOがコーディネーターを務め、石川県立大学や金沢大学、石川県工業試験場をはじめとする公設試験場、県内の食品メーカー20社以上が参加。平成21年度に3カ年計画でスタートし、文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム(都市エリア型)」に採択され、支援を受けた。
成果報告会では主催者を代表して、ISICO理事長の谷本正憲県知事があいさつに立ち、「健康増進に役立つ食品への消費者ニーズは高まっている。今回の研究開発で生まれた食品を一日も早く市場へ供給して消費者の期待に応えると同時に、石川県の食品産業に新たな付加価値を加えてほしい」と期待を寄せた。
事業を推進した大学、企業、公設試験場を代表してあいさつした県立大の松野隆一学長は「今回の研究開発を通して、石川、そして日本の食品産業に貢献できる成果を得られ、新たな発酵食品の開発につながった」と強調。その上で、「産学官連携によって、人材育成の面でも大きな成果が上がっており、今後、このプロジェクトが一過性でないことを示していきたい」と意気込みを述べた。
研究開発は3つのグループに分かれて進められ、各グループの代表者がその概要を披露した。
「発酵菌叢(そう)の解明」をテーマに取り組んだ県立大の熊谷英彦特任教授は、日本酒やかぶらずし、なれずし、いしる(いしり)といった発酵食品から、300種以上の乳酸菌を分離、同定した上で、最新の遺伝子解析法を用いて免疫機能を活性化したり、高血圧やアレルギーを抑制するといった機能性に優れた乳酸菌株を特定したことを発表。既に1件について特許を申請しており、今後も4件の申請を予定している。
「免疫評価技術の確立」をテーマに研究した金沢大学大学院の太田富久教授は、県立大で分離された20数種の乳酸菌株の中から、特に人体の免疫の中でも重要な消化管免疫を活性化させる3種類を動物実験によって見いだしたことを報告した。また、このグループでは消化管の免疫応答を測定するためのバイオチップを試作した。既に4件の特許を申請済みで、今後も1件の申請を予定している。
「醸造システムの開発」をテーマにした県立大の野口明徳教授は、超音波によって酵母や乳酸菌の増殖や代謝を促進したり、発酵状態をモニタリングする技術や、通電加熱によって酵母の増殖や代謝を促し、温度を精密制御する技術について発表。これによって、発酵の状態を安定させ、生産効率の向上が可能となる。3件の特許を申請・受理されている。
こうした成果を活用し、県内企業が29の試作品開発を手がけており、この日は四十萬谷本舗(金沢市)の四十萬谷正久社長、福光屋(金沢市)の松井圭三生産本部長、小松電子(小松市)の吉田哲郎常務、柳田食産(能登町)の福池正人社長が開発状況などについて報告した(詳細は下記参照)。
また、発表者らがパネルディスカッションに臨み、試作した機能性発酵食品の商品化に向けた課題や販売戦略について、議論を交わした。
このほか、ヤクルト本社(東京都) の常務執行役員を務める澤田治司中央研究所長が基調講演し、乳酸菌シロタ株による大腸がんの抑制効果やビフィズス菌による壊死性腸炎の予防など、プロバイオティクス(人体に有益な作用をもたらす微生物)の効果について解説した。
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | - |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.63より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.63 |