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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
産地と鮮度にこだわった一夜干しが人気の輪島海房やまぐち。原材料に使うのは輪島沖で獲れた魚だけで、水揚げされたその日のうちに開いて内臓を取り出し、輪島産の天然塩を振った後、干物に仕上げる。丁寧な仕事ぶりは同業者もうなるほどで、価格は外国産の約2倍にもかかわらず、多くの固定客から支持を集めている。
新商品の開発にも積極的で、中でも最近、ヒットの兆しを見せているのが、アジやサバの麹漬けだ。これは天然塩で塩漬けした鮮魚を米麹と日本酒、みりんを混ぜ合わせた調味料に漬け込んだもの。生で食べると麹のほんのりとした甘さとコクのある天然塩が魚の旨味を引き立て、さっとあぶれば麹の香りが一層際立つ。今年2月に伊勢丹(東京都)の催事で発売し、評判は上々だったという。
山口泉代表は「石川と違って東京の消費者は麹になじみがないので、麹を初めて食べる人にも食べやすい商品にしたい」と話し、今後はサワラやタイなど、焼き魚の麹漬けを商品化する計画だ。
麹漬け開発のヒントは伊勢丹のバイヤーからの情報だった。「麹に塩と水を混ぜて発酵させた調味料“塩麹” がブームになる」。そう聞いた山口代表は早速、麹と天然塩を使った商品づくりに取り組んだ。
伊勢丹との接点が生まれたきっかけは、平成20年度に採択された「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」である。山口代表はこの事業を活用してギフト商品の拡充に取り組み、4種の海藻にタイの切り身や甘エビ、いしる、酒粕を組み合わせた「海藻しゃぶしゃぶセット」を商品化。この際、販路開拓の一環として、ISICOのコーディネーターを介して伊勢丹の催事に出店する機会を得た。
魚の消費量が減り続ける中、やまぐちは伊勢丹に出店するたびに売り上げを伸ばしている。好調の背景にあるのは、消費者目線に立った商品づくりだろう。「都会では年配の女性でさえ、調理が面倒だし、骨もあって食べにくいと魚を敬遠する」。山口代表はそう話し、解凍するだけで食べられて、骨もない「天然ブリの旨煮」を開発。石川の郷土料理であるフグの卵巣の糠漬けも、もっと食べやすくしようとほぐしてビン詰めにした。
「魚には骨がある。そんな当たり前のことにとらわれずに開発することが大事」と力を込める山口代表。とびきりおいしい輪島の魚をもっと多くの人に食べてもらおうと試行錯誤が続く。
企業名 | 輪島網元やまぐち |
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創業・設立 | 創業 平成15年11月 |
事業内容 | 水産加工品の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.63より抜粋 |
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掲載号 | vol.63 |