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目指すは自動車市場の開拓 炭素繊維を成形可能なシートに

印刷用ページを表示する更新日:2012年4月17日更新

明日へのチャレンジ

鉄よりも強く、アルミよりも軽い炭素繊維。機体に炭素繊維強化複合材料(CFRP)を採用した航空機が完成するなど、用途は着実に広がっているが、普及に向けてネックとなっているのが加工の難しさだ。そこで、炭素繊維をプレス加工に適した板状の素材に成型しようと技術開発に取り組んでいるのが一村産業である。金属から炭素繊維へ。“ 素材革命”をリードするCFRPの開発を目指し、挑戦が続いている。

熱可塑性の板材加工はプレス機で

石井社長 一口にCFRPと言っても、その性質は、炭素繊維を固める樹脂によって熱可塑性と熱硬化性に分けられる。熱可塑性とは、加熱すると軟化して成形しやすくなり、冷やすと再び固くなる性質のこと。一度硬化すると元に戻らないのが熱硬化性だ。
 現在、市場の主流となっているのは熱硬化性CFRPである。ただ、成形に大規模な設備が必要となる上、時間がかかり、価格も高いために、航空機や一部の高級車などに用途が限定されている。
 一方、一村産業が手がけるのは、熱可塑性CFRPの開発である。熱可塑性CFRPは加工しやすい上に、工程作業時間を短くし、簡単に補修できる点が魅力だ。
 同社では、これをカーボンファイバースタンパブルシート(CFSS)と呼ばれる板状に成型し、鋼板のように、プレス機で簡単に加工できる素材として提供する。昨年には、50×50cmの大きさのCF-SSを完成させ、自動車部品メーカーや産業機械メーカーにサンプルの提供をスタートした。

炭素繊維と樹脂を独自技術で密着

熱可塑性CFRPのスタンバブルシート(CF-SS)とプレス機による加工サンプル 一村産業が将来有望な新素材として、CF-SSの開発に乗り出したのは平成19年のことである。平成22年秋からは「いしかわ次世代産業創造ファンド助成事業」の支援を受け、同社のグループ会社である丸一繊維(新潟県)や創和テキスタイル(羽咋市)、優水化成工業(宝達志水町)、そして平松産業(能美市)と連携して開発に当たった。
 CF-SSの製造工程は以下の通りである。まず、炭素繊維の糸を織物にして、熱可塑性のフィルム状樹脂を重ね合わせる。次に、炭素繊維織物と樹脂が一体化したシートを何枚か積み重ね、近赤外線で加熱した後、プレス機で圧縮し、板状に成型する。
 この中でも、困難を極めたのが樹脂を炭素繊維に浸み込ませる工程である。熱可塑性の樹脂は熱硬化性の樹脂に比べて粘度が高いため、炭素繊維の中にむらなく行き渡らせるのが難しいのだ。樹脂が含浸していない微細な空気の層はボイドと呼ばれ、ボイドの割合が多いほど、強度は落ちてしまう。そこで、一村産業では、炭素繊維織物に樹脂を浸透しやすくする特殊加工技術を確立。これによってボイドの割合を当初の9.3%から2%にまで下げることに成功した。
 既に試験販売がスタートしたとはいえ、決して開発が終わったわけではない。同社では引き続き、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」の後押しを受け、製品の改良に取り組んでいる。
 課題の一つはコストダウンである。現在、CF-SSは鋼板の約10倍の価格となっており、今後はシートを連続生産する技術を確立し、鋼板の数倍程度に低減する計画だ。
 また、より成型しやすい製品に進化させるため、炭素繊維にナイロンなどを巻き付けたコミングル糸を使ったCF-SSを開発中である。こうすることで繊維の引っ張り強度が高まり、一枚の板を筒状などに成型する深絞り加工にも対応しやすくなる。

パリの見本市で好評 ルイ・ヴィトンが採用

 日本の繊維業界は中国やアジアの攻勢が激しく、厳しい状況が続く。そんな中でも、同社の石井銀二郎社長の表情は明るく、平成32年に向けた長期ビジョンでは現在の3倍となる売り上げ目標を掲げている。
 成長戦略の鍵を握るのはCF-SSをはじめとする炭素繊維である。炭素繊維は現在、同社の総売上の3%に過ぎないが、これを50%以上に飛躍させようと青写真を描いている。金額にすればざっと70倍だ。
 石井社長が販路の本命と見定めるのが自動車である。車体にCFRPを用いれば、大幅な軽量化が実現し、燃費が改善。石油燃料の使用を抑え、CO2の排出量削減が可能となる。CF-SSは製造時間の短い自動車業界でも活用できるよう約60秒での成型を可能とした。今後、さらに品質の改良やコストダウンが進めば、普及が加速することは間違いないだろう。
 石井社長は「鉄が炭素繊維に置き換われば、自動車製造も大きく変わる」と話し、販路拡大に向けて「素材だけでなく、設計や加工、検査の方法まで含めて、提案できるようにしたい」と意気込む。
昨年3月にパリで開かれたJEC展 昨年3月にはフランス・パリで開かれた世界最大の複合材料展示会「JEC展」に初出展し、CF-SSを出品。3日間の会期中には同社ブースに自動車や航空機メーカーなど70社200人が足を運び、商談件数は100件に上るなど好評を博した。
炭素繊維織物に金箔を施したバッグ このほか、同展では「伝統工芸と先端技術の融合」をテーマに掲げ、箔一(金沢市)と共同で開発した金箔で装飾した炭素繊維織物のバッグなどを出品。ヨーロッパの有名ブランドの関心を集め、昨年10月にはルイ・ヴィトンとの商談がまとまり、炭素繊維製バッグの共同開発に関する契約を結んだ。
 自動車や航空機をはじめ、ファッションや産業機器、医療機器など、炭素繊維の販路拡大には大きな可能性が広がる。日本で、そして世界を席巻する新素材の開発にこれからも目が離せない。

企業情報

企業名 一村産業 株式会社 
創業・設立 設立 昭和54年1月
事業内容 衣料用テキスタイル、産業資材、先端複合材などの製造、販売

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備考 情報誌「ISICO」vol.63より抜粋
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掲載号 vol.63