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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
能登町柳田地区の特産品であるブルーベリーを使ってワインやジャムなどを製造する柳田食産は今年2月、ブルーベリーと新たに発見された高機能の乳酸菌を入れたフローズンヨーグルトの試作品を完成させた。今後、改良を加えると同時に、今夏の発売開始を目指して、パッケージの制作や販路開拓に取り組む。
この乳酸菌は「ANP7-1」と呼ばれ、同社が製造する「能登あじのなれずし」から発見された。アミノ酸の一種であるギャバを産生したり、免疫細胞を活性化したりする機能に優れ、摂取すると「血圧が上がりにくくなる」「疲れにくくなる」「アレルギー症状が軽くなる」といった効果が期待できるという。
なれずしは奥能登の伝統食で、塩漬けした魚とご飯、サンショウなどを漬け込み、熟成させた発酵食品である。夏祭りのごちそうとしてかつては各家が味を競ったが、作り手の減少、高齢化が進んでいることから、同社では「地元の食文化を伝承したい」(宮前博人技師)との思いで7 ~8年前から製造を続けている。
フローズンヨーグルトの開発は、石川の発酵食品の持つ機能性を生かして新商品を開発する文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラムの一環として取り組み、石川県立大学や金沢大学、石川県工業試験場と連携した。
ISICOコーディネーターの近藤哲史氏、川畠平一氏が柳田食産のなれずしを石川県立大学の熊谷英彦特任教授、松井裕客員教授に紹介したことをきっかけに3年前から研究がスタート。両氏の解析によって、なれずしに含まれる乳酸菌の中から有用な菌株が特定された。今後、金沢大学医薬保健研究域の太田富久教授がその摂取量と効果の関係などについて詳しく検証する。
「昔から、なれずしを食べれば夏バテしないと言われるが、それが乳酸菌の働きによる効果だとは思わなかった」。研究の成果を聞き、そう驚いたのは、なれずしの製造に携わる柳田食産の宮前技師である。
同社が扱うブルーベリーは以前から、疲れ目や視力低下の予防に効果があることが知られており、宮前技師は「ブルーベリーに乳酸菌を加えれば、機能性に富んだデザートになる」と考え、フローズンヨーグルトの開発に乗り出した。ちなみに乳酸菌を凍らせると発酵は進まず、機能性は維持される。
フローズンヨーグルトのほかにも、乳酸菌入りのブルーベリーゼリーも開発中だが、ゼリーを製造するには加熱殺菌工程が必要で、この際、乳酸菌が死滅してしまうことがネックとなっている。このため、加熱せずに凍らせ、フローズンゼリーとして商品化できないかなど、ラインアップ拡充に向け、検討が続いている。
企業名 | 柳田食産 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 平成7年8月 |
事業内容 | ブルーベリーや果実を使った加工食品の製造・販売、ブルーベリー摘み取り園の運営 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.62より抜粋 |
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掲載号 | vol.62 |