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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
山中漆器が得意とする拭(ふ)き漆と、蒔絵(まきえ)の梨子地(なしじ)技法を滑り止め機能に生かした箸(はし)が人気を呼んでいる。国内最大のインターネットショッピングモールである楽天市場で、よした華正工房の「うるしけんこう箸 竹拭漆(ふきうるし)」が、ウイークリーランキング箸部門(昨年12月26日~今年1月1日)で堂々の1位に輝いた。
「消費者に本物の良さを知ってもらわないことには始まらない」と、吉田利昭代表が採算を度外視して送り出した新商品であり、購入者から「滑らずとても使いやすい」「物を大切に使う習慣が身についた」など、多数の評価が寄せられている。
棗(なつめ)など高価な茶道具を専門に製造してきた吉田代表が、食器の分野に挑戦するきっかけとなったのが、10年ほど前から手がける漆茶?(ちゃわん)である。茶碗と言えば陶磁器だが、桃山時代、豊臣秀吉が茶会で使うために漆器で作らせたものがサントリー美術館に収蔵されていることを知り、早速、試作に取りかかった。
茶筅(ちゃせん)を振っても茶?の内面に傷がつかないよう試行錯誤を重ねた結果、金粉や銀粉を漆器の表面にまく梨子地がよいことが分かった。さらに、外側の胴の部分に蒔絵を施すなどした漆茶?は、裏千家をはじめ専門家からも高い評価を受け、茶会などでも使われるようになった。
近年、茶道人口は減少傾向が続き、「生き残っていくには、広く使ってもらえる食器分野での商品開発が不可欠」と考え、「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」を利用して、新たな商品化の道に踏み出した。この中から生まれたのが、冒頭に紹介した箸のほか、飯椀や汁椀、焼酎カップ、猪口(ちょこ)などである。
漆や銀の優れた性質を消費者にアピールするため、専門機関に検査を依頼し、強度に加えて抗菌力など安全性の面でも食器に適していることを裏付けた。それを訴求する戦略から、食器シリーズのブランド名となる「うるしけんこう」を商標登録した。ちなみに、「うるしけんこう椀『彩文』」は、平成21年度石川ブランド認定製品に選定されている。
販路開拓では、楽天市場への出店のほか、「うるし茶会」という独自イベントに力を入れ、全国を回る。吉田代表と長男の昭氏が、茶道具店や茶舗とタイアップして開くユニークな茶会で、伝統的な茶道具とともに銀梨子地の技法を生かした漆茶?をはじめ食器を紹介し、浸透を図る。
新分野への進出効果もあり、売り上げは前期で10%増、今期は20%以上の増になる見通しだ。吉田代表は「今後はギフト需要の取り込みにも本腰を入れたい」と話す。
企業名 | 有限会社 よした |
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創業・設立 | 設立 昭和61年8月 |
事業内容 | 漆器製造・卸(茶道具、和食器、アクセサリー等) |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.62より抜粋 |
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掲載号 | vol.62 |