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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
便箋の長辺が97cmもある「長い手紙」や渦巻き状に罫線が引かれた「うずまき便箋」など、個性的でユーモアあふれる便箋や封筒を100種類以上も販売するマルトモ商店。昨年には「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の補助事業を活用して、新たに3種類の手紙セットを開発したほか、オリジナル商品群の販促に活用するロゴを制作した。
新商品の一つである「なが~い和ごころ」は、伝統工芸士が丁寧に漉(す)き上げた和紙で作った便箋と封筒のセットだ。便箋は18.2cm×47cmと巻物を思わせる横長の形で、パッケージは着物を包んでおく畳紙(たとうし)をイメージした。
また、「匠の手漉き和紙箋」は便箋と封筒に、本の形をした収納ケースをセットにしたもの。ケースは立てられるので、愛読書と一緒に本棚や机に並べておくことが可能だ。
「縞々(しましま)和紙箋」は、手紙をしたためる際に罫線の役目を果たすストライプ柄が入った白色の和紙と色紙を二枚重ねて便箋にしており、重ね合わせた色合いの美しさが特徴だ。
今後、自社のネットショップをリニューアルして販売を本格化するほか、展示商談会に出展するなどして販路拡大に取り組む。
マルトモ商店がこうした自社商品の開発に乗り出したのは、今から15年前にさかのぼる。開発のベースとなったのは、創業当初から主力としてきた畳紙だった。畳紙には機械漉きの和紙が使われており、品質のいいものは、水に濡れても溶けず、糸で縫うこともできる。そこで同社の中山道男社長は、和紙に補強剤や防腐剤、防水剤として柿渋を塗布し、座布団やブックカバー、ランチョンマットといった雑貨を商品化した。
続いて、機械漉きの和紙を使った便箋や封筒を企画。本業の設備やノウハウを生かし、「朝に企画したものが、夕方には形になる」(中山社長)という機動力で、次々とラインアップを拡充していった。「確かにメールは早くて便利かもしれません。でも、手紙は書くためにかけた時間も一緒に送ってくれます。受け取った人は自分のためだけに割いてくれた時間を感じるからこそ、心を動かされるのです」。中山社長は手紙の魅力についてこのように話し、思わず手紙を書きたくなるような便箋を企画しようと、今日も発想をふくらませている。
企業名 | 株式会社 マルトモ商店 |
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創業・設立 | 創業 昭和16年1月 |
事業内容 | 紙製品加工、一般印刷、和紙工芸、パッケージ制作 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.62より抜粋 |
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掲載号 | vol.62 |