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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
「このわた」や「干くちこ」など、七尾湾で獲れたナマコで珍味を製造するなまこや。昨年8月には、ナマコエキスと能登産の珪藻土、和倉温泉の源泉水を配合した化粧石けん「なまこ美人」を開発し、順調に売り上げを伸ばしている。
ナマコや珪藻土で作った石けんと言っても、決して奇をてらったわけではない。ナマコに豊富に含まれているコラーゲンやセラミドといった成分が肌に潤いと弾力を与え、サポニンの発泡作用が汚れをしっかりと浮き上がらせる。また、珪藻土の中にあるモンモリオナイト成分が毛穴に詰まった汚れや余分な角質を吸着し、肌の透明感をよみがえらせてくれる。
商品ラインアップは、無香料の「ナチュラルベージュ」とミントの香りの「マリンブルー」の2種類。ナチュラルベージュには珪藻土が多めに配合され、しっとりとした洗い上がりになる。七尾市内にある自社店舗や金沢市内にある石川県観光物産館、しいのき迎賓館などで販売しており、自社のネットショップでは85%のリピート率を誇る人気商品となっている。
開発のきっかけは、同社の園山芳生専務が抱いた一つの疑問だった。「ナマコをさばく職人の手はなぜきれいなのか」。ナマコの珍味づくりは毎年1、2月に最盛期を迎える。厳しい寒さの中、冷水に手をひたしながらの作業にもかかわらず、職人の手は荒れることもなく、むしろすべすべとしていた。
疑問の解決に協力したのが金沢大学イノベーション創成センターである。同センターが成分を分析したところ、ナマコはコラーゲンの固まりのような生き物であることが分かった。
マレーシアでナマコ石けんを目にした経験があった園山専務は、能登版ナマコ石けんの商品化を企画。未知の分野への参入だけにリスクも心配したが、「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の助成制度が大きな後押しとなった。
リサーチの結果、長崎県に先行商品があったため、地元の特産である珪藻土や温泉水を配合して差別化。珪藻土にはナマコの生臭さを消してくれる効果もあった。
七尾湾を含む「能登の里山里海」は国連食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産に登録された。平成25年4月には能登有料道路が無料化され、平成26年度末には北陸新幹線の金沢開業も控える。「能登に足を運んでもらい、能登の良さを知ってもらうため、今後も能登の素材を使った商品開発を続けていきたい」。なまこ美人に続くヒット商品の開発を目指し、園山専務は意欲を燃やしている。
企業名 | 有限会社 大根音松商店 なまこや |
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創業・設立 | 設立 昭和59年11月 |
事業内容 | 加工食品、化粧石鹸の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.61より抜粋 |
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掲載号 | vol.61 |