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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
メルヘン日進堂は今年7月、「能登の里山里海」が世界農業遺産に登録されたことを記念して、新商品「バウムチップス」を発売した。バウムチップスはミニサイズのバウムクーヘンを薄くスライスし、熱風で乾燥させた菓子で、サクサクとした独特の食感が特徴だ。
味は能登大納言、能登かぼちゃ、大浜大豆、ほうれん草、紫いも、プレーン、ショコラ、ごまの8種類。使われている野菜はすべて同社が店を構える珠洲産だ。蒸した野菜をこして、生地に練り込んでおり、どのバウムチップスも素材本来の味が濃厚に感じられる。体に優しい商品を作りたいとの思いから、膨張剤や着色料、防腐剤は使用していない。
1枚の大きさは直径6cm、厚さ5mm。1箱8枚入りで350円となっている。お盆の帰省客でにぎわう8月には、同店のお土産ランキングで他の人気商品を抑え、堂々の1位に輝いた。
珠洲の老舗菓子店である同社では、約44年前からバウムクーヘンを看板商品に育ててきた。その代表が珠洲焼のつぼの形をした「珠洲焼の里」である。中にはシロップで煮込んだリンゴが丸ごと1個入っており、店頭とネットショップを合わせ、年間4万個を売り上げるヒット商品だ。このほか、珠洲の里山で採れた野菜を練り込んで5色5層に仕上げた「大地の虹」も根強い人気を誇る。
ところで、これらの商品は防腐剤を使っていないため、賞味期限は真空パックの状態でも2週間にとどまる。そこで、より日持ちする商品を目指して開発したのがバウムチップスだ。水分を飛ばして賞味期限を50日間にまで延ばすことに成功。企画開発を担当した同社の日野愛子さんは「土産品としてはもちろん、バレンタインデーやホワイトデー商戦などの長期販売にも対応できる商品になった」と胸を張る。
商品やパッケージの試作開発に当たっては、「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」を活用した。バウムチップスを乾燥させる工程にはオーブンを使わず、バウムクーヘンを焼成する際に発生する熱をリサイクルする仕組みを考案。設備投資を最小限に抑えると同時に、工場の生産性を落とさないよう工夫した。
日野さんは現在、新たに珠洲の海水塩を使った味をラインアップに加えようと試行錯誤の真っ最中だ。また、農産物に付加価値をつける人材などを養成する金沢大学の「能登里山マイスター養成プログラム」を受講しながら、新たな能登産の食材を発掘しようと、研究を進めている。
企業名 | 有限会社 メルヘン日進堂 |
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創業・設立 | 創業 大正2年2月 |
事業内容 | バウムクーヘン、和・洋菓子の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.61より抜粋 |
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掲載号 | vol.61 |