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ISICOは11月24~25日、石川県地場産業振興センター本館で「BUSINESS MEETING in ISHIKAWA JAPAN」を開催した。これは、「ITとコンテンツの融合」による新しいビジネスモデルの創出を目的に、IT企業やコンテンツ企業が交流を図るイベントで、石川県内はもちろんISICOが交流を続ける韓国の大邱(テグ)や釜山(プサン)、そして東京や北九州の企業が参加した。また、24日は、ITによって車を一層便利にするサービスやスマートフォン市場の最新動向に関する基調講演が行われたほか、25日にはコンテンツセッションと銘打って、県内外で活躍するコンテンツ企業のクリエイターらがパネルディスカッションを行った。商談会参加企業が独自の技術やコンテンツを来場者にプレゼンテーションする場も設けられた。2日間で40件の商談が交わされたほか、会場には両日で延べ270人が来場。名刺や情報の交換が盛んに行われ、今後のビジネス連携に期待が膨らんだ。
今回のイベント開催には、以下の二つの狙いがある。一つはIT 企業の連携促進だ。多くの県内IT 企業は大手の下請け業務を主力としてきたが、大企業のIT 投資が一段落し、近年は受注の確保が難しくなっている。このため、独自の技術を磨き、自社製品の開発に活路を見いだそうとする企業も多く、こうした企業にアライアンスを促すことで、競争力を高めてもらうのだ。
また、ゲームやCG などを制作するコンテンツ企業の集積促進も狙いの一つだ。コンテンツ企業は首都圏に集中しているが、情報通信技術の進歩によって地方で制作し、地方から発信するビジネスモデルが可能になった。現に石川県内でもゲームの制作会社が設立されたり、東京のCG 制作会社が開発拠点を設けたりといった動きが目立っており、さらに集積が加速すれば、お互いの得意分野を生かしながら協業できる環境が整うことになる。
さらに、IT もコンテンツも国際的な成長の見込める分野だけに、業種の垣根を超えた連携やグローバル展開にも期待がかかる。
特にこの分野で先進的な取り組みを見せる韓国企業との連携は県内企業にとって大きな力となるだろう。
今回の出展企業の中でもとりわけ印象的だったのは大邱のEGIS社だ。同社が開発するのは3DCGを駆使したリアリティの高い地理情報システム(GIS)であり、これは景観や防災のシミュレーション、観光案内、ゲームの背景など、幅広い用途に応用される新たなプラットフォーム事業として有望視される。こうした企業との連携は県内企業の成長の原動力となるに違いない。
では、ここからは基調講演やパネルディスカッションの内容をダイジェストで紹介しよう。
ドライブしながら外部とさまざまな情報をやりとりする車のIT 化について講演したのは、トヨタ自動車e-TOYOTA 部テレマティクス事業室の松枝伸彰室長だ。松枝室長は同社が提供する「G-BOOK」について「専用の通信機器や携帯電話、スマートフォンを使って、ドライバーが運転しながら各種情報サービスを受けられる」と説明。その事例として、近隣の店舗情報や渋滞予測、渋滞回避ルートといった情報を提供するほか、交通事故の際、エアバッグが作動すると自動的に救急車を呼んでくれる機能などを紹介した。
また、「これからの車には乗り物としての価値だけでなく、情報通信機器としての価値が求められるようになり、今後、自動車メーカーはものづくり企業ではなく、安全・安心で快適なカーライフを販売するサービス企業になる」と展望した。
スマートフォン市場の最新動向について講演したITジャーナリストの林信行氏は、スマートフォンとソーシャルメディアの組み合わせが人々のライフスタイルを変化させることを、iPhone とTwitter の頭文字を組み合わせて「iT 革命」と表現。「以前は一部の人しか使えなかった技術を一般の人も使えるようになった」と評価した。
また、スマートフォンの活用例として、メイクアップ(化粧)のシミュレーションができるアプリなどを紹介し、「ファッションや美容、スポーツ、教育など、これまでIT 化されていなかった分野ほど、面白い活用法が生まれている」と解説。一方で、「技術ありきで商品を考えてはいけない」と警鐘を鳴らし、「まず、豊かな暮らしを実現するために、どんな商品が理想的なのかを考えることが大切」とアドバイスした。
今回は県内のスマートフォンアプリ開発業者も数多く参加しており、今後いかに社会的ニーズをとらえ、成長していくかが期待される。
クリエイターを目指す学生が多く来場したコンテンツセッションでは、まず、テレビCM のCG 制作などを手がけるドロイズ(東京)の尾小山良哉代表が講演。「メディアやデバイスが多様化したため、以前に比べ、表現の手法もフレキシブルになった」と現状分析した上で「今こそ自由に発想できるチャンスであり、手法にとらわれずクリエイティブに挑んでほしい」とメッセージした。
パネルディスカッションには、尾小山代表に加え、CG アニメを制作するアニマ(東京)の笹原晋也代表、自社ブランドでゲームソフトを開発するグランゼーラ(金沢市)の九条一馬チーフクリエイター、ミュージックビデオなどさまざまな分野にCG アニメを提供する神か みかぜどうが風動画(東京)の水崎淳平代表が参加した。
金沢市内にも開発拠点を構える笹原代表は「ネットワーク技術が進歩しているので地理的なハンデは感じない」と話し、九条氏も「家賃が安く、生活するにはストレスのない場所」と金沢で仕事するメリットを強調した。一方で、「東京の学生の方が専門知識や技術レベルは高い」(尾小山代表)など、人材教育については遅れを指摘する声もあり、水崎代表をはじめ4 人は「現場に即した人材教育を進めるために協力していきたい」と声をそろえた。
コンテンツ産業は技術よりもアイデアが大切ですが、今回の参加企業には技術はもちろん、創造性に優れた企業が多いと感じました。DIPから参加した企業は韓国やアジアで実績のある有名企業であり、石川の企業と交流しながら事業を拡大することを目的としています。DIPとISICOの交流も9年目を迎え、今後は韓国企業が石川に進出したり、石川の企業が韓国に支店を開設したりするなど、グローバルなビジネス展開が本格化することを願っています。
大邱デジタル産業振興院(DIP) チェ・ジョンギュ院長
企業名 | - |
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創業・設立 | 設立 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.61より抜粋 |
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掲載号 | vol.61 |