石川県が今年4月に開設した「いしかわ次世代産業創造支援センター」は、将来の県経済の柱として有望視される炭素繊維複合材料や機能性食品の開発をサポートする研究施設だ。その概要を紹介する。
「いしかわ次世代産業創造支援センター」は鉄骨造り2階建てで、延べ床面積は約648 平方メートル。独立行政法人科学技術振興機構が「地域産学官共同研究拠点整備事業」として採択して、石川県工業試験場の敷地内に建設、県に無償貸与している。
同センターの内部には、炭素繊維ゾーンと機能性食品ゾーンがあり、それぞれの研究に役立つ最新の試作開発設備、評価試験機器が整備された。企業や大学などは、県に設備や機器の使用料金を支払って利用する。同センターでは職員が機器の使用法などについてアドバイスする。
炭素繊維ゾーンの最大の特徴は、炭素繊維織物の作製から複合材料(CFRP)の製造、プレス成形、評価に至るまで、試作開発を一貫して支援するための設備をそろえた点にある。 これは全国でも初めての取り組みで、炭素繊維の織物を作製できる小型サンプル織機をはじめ、熱可塑性樹脂フィルムを製造し、炭素繊維織物と重ね合わせる試験用フィルム成形押出機、CFRPを成形する高温型プレス機などを導入し、CFRPの製造技術や加工技術の研究開発を後押しする。
また、材料を破壊せずに内部の欠陥を検査するシステムや耐衝撃性を評価する試験機も整備。実際に使用される場面を想定し、極寒や灼熱、高温多湿や低温低湿など、さまざまな環境を再現する試験室もある。
ユニークなところでは、音がまったく反響しない無響室や音を均一に響かせる残響室があり、これらはCFRPが自動車や家電製品の部品、建材として使われた場合の吸音性や遮音性の測定に最適だ。
一方、機能性食品ゾーンは、既存の食品加工実験棟を改修したもので、これまで人の嗅覚で測定していた食品の香気成分や異臭成分を化学的に分析するフレーバー評価システムや、食品の保存性を調べる水分活性測定装置など、6台の機器を新たに導入した。 加熱すると柔らかくなる性質を持つ熱可塑性樹脂を用いたCFRPの開発やその加工技術の確立は、これからが本番だ。いしりや日本酒など、石川県の伝統的発酵食品を活用した新しい機能性食品の開発にも期待が集まる。
中野幸一センター長は「新たな技術や製品の開発に貢献できる設備が整った。いろんな用途に使えるので、職員に、気軽に相談してほしい」と話しており、企業の技術開発の大きな力となりそうだ。
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創業・設立 | 創業 |
事業内容 | - |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.58より抜粋 |
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掲載号 | vol.58 |