石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
上出長右衛門窯では世界的にも著名なデザイナーであるスペインのハイメ・アジョン氏と協働で新商品を開発した。
新商品のラインアップは徳利、湯飲み、急須、丸皿など31点。いずれもハイメ氏がデザインした文様が、長右衛門窯の持ち味である深い藍色の染付をベースに表現されている。また、愛らしい小鳥のくちばしが注ぎ口となったしょう油差し、口や鼻を模して、組み合わせると人の顔のようになる小鉢など、器の形にもハイメ氏の感性が生かされている。
これらの商品は、昨秋に東京ミッドタウンをメイン会場として開かれたデザインイベント「デザインタイドトーキョー 2010」でお披露目され、公式ガイドブックの表紙を飾るなど、大きな話題を呼んだ。今年5月には西武渋谷店で、期間限定で販売をスタート。秋までに首都圏の複数の百貨店でも販売を計画している。
リヤドロ、バカラ、スワロフスキーといった有名ブランドとの協働で知られるハイメ氏が日本のブランドとコラボレーションするのは初めてのこと。2年前のデザインタイドトーキョーにおける、ハイメ氏と長右衛門窯6代目の上出惠悟氏との出会いが契機となった。長右衛門窯にとっても外部デザイナーの起用は初めての経験だ。
制作を前に、5代目の上出雅彦氏がハイメ氏にオーダーしたのは「実用的な器を」という一点だけである。ただ、「九谷焼や長右衛門窯はもちろん、日本の文化を理解した上で仕事に取り組んでほしい」と、東京や石川にある社寺や歴史的な町並み、伝統工芸の制作現場を訪ねたり、温泉や日本食を堪能するなど、計20日間にわたって行動を共にし、日本文化を理解してもらうと同時に、信頼関係を育んだ。
商品化にあたっては、ハイメ氏のデザイン画を基に職人が一つひとつ丁寧に手書きし、例えば、しょう油差しならば液だれしないようにと、使い勝手にもこだわった。今後、第二弾を制作するほか、ヨーロッパへの販路拡大を目指す。 九谷焼には、江戸時代に青木木米や永楽和全を京都から招いて再興、活性化を図るなど、外部からの刺激によって変革を遂げてきた歴史がある。雅彦氏は「今の時代なら海外からデザイナーを招いても不思議じゃない」と話し、青手や色絵といった九谷焼の伝統的な様式と同様に、「100年後も受け継がれる様式にしたい」と期待をかけている。
企業名 | 上出長右衛門窯 |
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創業・設立 | 創業 明治12年 |
事業内容 | 九谷焼(美術工芸品、割烹食器、日用食器)の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.58より抜粋 |
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掲載号 | vol.58 |