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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
鋳造用に合成樹脂で金型を製造する北日本テクノスでは、 バスの車体に使われる大型部品向けに、プレス用の樹脂製金型を新たに開発した。
樹脂製金型は、金属を切削加工して作る金型に比べると製造コストは安いが、強度が低く摩耗しやすいため、量産用のプレス加工には適さず、従来は試作用などとして使われてきた。
同社が新たに開発したプレス用の樹脂製金型は、強度を上げるために、エポキシ樹脂に硬化剤を配合した独自の樹脂を採用。その結果、これまで2,400回程度しか耐えられなかったプレス機での使用回数を3,000回以上に伸ばすことに成功した。金属製金型に比べ、製造コストは約30%も安く、製造に要する時間も50%以上短縮できる。
また、金属製ならば一旦製造してしまうと変更が困難だが、樹脂製の場合、表面の樹脂を削り取って造り直すだけでよく、設計変更にも素早く、安価で対応可能だ。
開発にあたってはバス車体製造最大手のジェイ・バス( 小松市)や樹脂メーカーの日新レジン(神奈川県)と協力したほか、金沢工業大学と石川県工業試験場が耐久性などの試験、評価を担当。平成20年度に経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業に採択され、3年計画で研究を進めた。
「日本車を製造するための金型はすべて金属製だが、ヨーロッパでは樹脂製の金型で量産する車も多い」。そう話すのは北日本テクノスの田中稔社長である。乗用車に比べて生産台数の少ないバスならば樹脂製金型のメリットが生かせると考え、平成17年からバスの骨格部品の製造を受注し、強固な信頼関係を築いてきたジェイ・バスに共同開発を提案した。
車は部品点数が多く、1台の車を開発、製造するためには数千万円から数億円の金型費が必要と言われる。安価な樹脂製金型は大幅なコスト削減に貢献するうえ、多品種少量生産に適しており、車体のモデルチェンジもしやすくなる。複数の部品を一体化し、プレス加工すれば、生産効率の向上や軽量化にも役立つ。
研究開発を終え、今年度からジェイ・バスへの納品を本格化する計画で、田中社長は今後、次世代車の素材として有望視される炭素繊維の成型に役立つ樹脂製金型の開発も視野に入れている。
企業名 | 株式会社 北日本テクノス |
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創業・設立 | 設立 昭和49年9月 |
事業内容 | 各種樹脂製金型の製造、自動車部品の板金加工・組立など |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.58より抜粋 |
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掲載号 | vol.58 |