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石川県が創設した「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」と経済産業省の「地域産業資源活用事業」の認定企業にスポットを当て、地域の資源を生かした商品開発について紹介する。
美しい紅殻格子(べんがらごうし)の街並みが今なお残るひがし茶屋街は、金沢を象徴する観光スポットの一つだ。このひがし茶屋街の一角に平成21年7月、オープンしたのが「玉匣(たまくしげ)」である。玉匣とは、万葉集にも登場する宝石箱のこと。店内では、宝石に負けず劣らず個性的な輝きを放つクラフトの数々が出迎えてくれる。
これらのクラフトは、北陸在住の若手作家24人の手によるもの。「ひがし茶屋街の新たな魅力を創出、発信して、金沢への誘客につなげたい」との考えから、店舗を運営するジェムナカムラの中村大介社長が制作をプロデュースした。
焼き物や染め物、ガラス工芸、漆器、金工、水引など、ジャンルはさまざまだが、中村社長は、品のよさや凛とした雰囲気など、金沢のイメージに合った作品を手がける若手作家を抜擢。どの作家も現代的な感性から伝統工芸にアプローチしており、店内には、女性が自分への贈り物として購入したり、普段使いできるようなクラフトがそろう。平日でもひっきりなしに観光客らが訪れる人気店として、にぎわい創出に一役買っている。
こうした取り組みは「若手工芸作家の作品によるひがし茶屋街の発信事業」として、平成21年度のいしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)事業に採択されており、同社では助成金を活用して印刷物やホームページの制作などを行っている。
金沢市南町でおよそ30年間、ジュエリーショップを経営してきたジェムナカムラがクラフト販売に乗り出したきっかけは、中村社長が生まれ育ったひがし茶屋街へと店舗を移転したことだった。
地域の魅力アップに貢献するため、ジュエリーだけでなく、ひがし茶屋街にふさわしい商材も取り扱おうとクラフトに着目。ジュエリーショップとして培ってきたノウハウを生かして接客、販売することで、若手作家の手助けにもなると考えた。
プロデュースにあたっては、「作品には住んでいる土地の空気感が必ず反映される」(中村社長)という信念のもと、無理に金沢らしさを表現させるのではなく、若手作家の感性を尊重。一方で、作家性の追求と売れる商品づくりのバランスを大切にしてもらおうと、来店客の声をフィードバックするよう努めている。
今後は、ネットショップの開設や、若手作家の技術と感性を生かしたオリジナルジュエリーやジュエリーケースの開発を計画しており、ひがし茶屋街の魅力アップと若手作家の育成に、一層力を注ぐ。
企業名 | 株式会社 ジェムナカムラ |
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創業・設立 | 設立 昭和63年1月 |
事業内容 | クラフトやアクセサリー小物、宝飾品の販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.57より抜粋 |
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掲載号 | vol.57 |